ケアンズ通信

21. オーストラリア住宅事情 ~ケアンズで家(部屋)を借りる

ゴールドコーストの日系不動産会社での研修を終えた私は、その業務提携先であるケアンズの現地不動産会社に就職するために、2007年3月にケアンズへ移動することになった。オーストラリアに来て約4年がたっていたが、それまでの住まいはいつも誰かの紹介で決まっていたため、ケアンズに来て初めて「自分で家探しをする」こととなった。

オーストラリアでの家(賃貸物件)を探す場合、一番一般的で効率的なのは、不動産情報のウェブサイトで探す方法。気に入った物件を見つけたら、その物件を扱っている不動産会社に内覧の申し込みをし、内覧をして気に入れば入居希望の申請書を提出する。申請書にはリファラーと呼ばれる推薦人や、それまでの賃貸履歴の記入が求められ、不動産会社は実際に推薦人に電話をかけて身元の確認を行うだけでなく、業界団体で作っている全国規模のデータベースで賃貸履歴の確認も行う。前に借りていた家で家賃を滞納していたり、問題を起こしたりしたことがあれば、申請は却下されてしまう。また家賃をきちんと支払えるかどうかを確認するために、給与明細や銀行預金額の証明等が求められることもある。申請書の確認後、不動産会社は物件のオーナーに賃貸希望者について報告をし、オーナーからOKが出れば賃貸契約書を取り交わして賃貸が始まる。賃貸期間は通常6ヶ月間か1年間で、期間が終わる時に賃借人、賃貸人双方の同意により更新を行う。家賃は週単位で設定されているが、支払い方法は週払い、隔週払い、月払いの中から選ぶことも出来る。入居の際には家賃4週間分のボンドとよばれる保証金を家賃以外に支払う。ボンドは退去の際に賃借人に返金されるが、家賃の未納が有った場合や、退去時に物件に不具合が見つかったり、掃除がきちんと行われていなかった場合などは、このボンドから不足家賃、修繕費用、掃除代金などが差し引かれる。

私の部屋探しは勤務先が不動産会社という特権を最大限に利用させてもらったため、いたってスムーズだった。通勤の足となる車を持っていなかった私は「会社から徒歩圏内にある1ルームのアパート」という条件で、会社の人に物件を見せてもらった。勤務先のオフィスはいわゆる高級住宅地と言われる所にあり、周りには大きな家が多いのだが、その中に低層アパートのみが立ち並ぶ一角があって、私が内覧した週180ドルのアパートはその通りの一番奥に有った。敷地の右側が青空駐車場で、左側に二階建てのアパート二棟がハの字型に建っていた。内覧した部屋はハの字の右側、頭の位置の二階で、ハの字の左側、頭の位置の人と共有の外階段を上がった右奥に入り口となるサッシの引き戸があり、中は十二畳ほどのL字型スペースにリビング、ダイニング、キッチン、奥には6畳程度の寝室に二畳大のバストイレ、ランドリーがついていた。この築20年のブロック建築のアパートを最初に見た時は「日本語で言うアパートって感じ。マンションが良かったのに」と正直がっかりしたものの、とにかく早く落ち着きたかったのと、案内してくれた同僚になったばかりの会社の人に「No」と言うのも気が引けたため、この部屋を借りることにその場で決めた。内覧の時にニュージーランドに帰国するという前の賃貸人がまだ住んでいたのだが「引っ越してくるんだったらここにある家具を買わないかい?」と聞かれ、「じゃ、売ってちょうだい」と家具の購入も同時に決めた。私の他にも賃貸希望者がいたようだが、職権が大いに乱用されて私の申請が受け付けられ、数日内にそのアパートに移り住むことができた。メルボルンのデビーのホワイトハウスを出てから四ヶ月、やっと住所不定を返上することが出来た。

私が暮らしたアパートメント。2007年から2008年当時、このアパート(1ベッドルーム)の週家賃は180豪ドルでした。

ケアンズで賃貸物件を借りるのは、職権乱用をしなくてもそんなに難しくはないが、人口と比較して賃貸物件が常に不足気味のシドニーやメルボルンの都市部等では、大きく事情が異なるようだ。人気の物件は不動産会社があらかじめ設定した日時にのみしか内覧させて貰えず、その日を逃してしまえば借りることは出来ない。内覧日には多くの賃貸希望者が押し寄せることが常で、家を気に入って賃貸申請書を出したとしても賃借人として選ばれる確率は低い。中には賃借人を決めるのにオークションが行われ、一番高い家賃をつけた人に賃貸する権利が与えられるといった物件もあるらしい。家を借りるのも簡単ではないようだ。

やっとの思いで借りたアパートや家も、不動産が売買される頻度が日本よりもはるかに多いオーストラリアでは、賃貸期間中に売りに出されることになったというケースも多い。物件が売れたとしても賃貸契約の終了までは立ち退く必要ないが、販売期間中、不動産会社の営業マンや物件の内覧者が入れ替わり立ち代りやってくるというのは、賃貸人にとっては迷惑この上ない話だ。

幸い私が借りたアパートのオーナーさんは、私がそのアパートで暮らしていた間は物件を売りに出さず、また賃貸料を上げたいと言われた時にも、「今のお給料ではこれ以上家賃に払えないので、なんとか今のままで」と私が懇願レターを書いたところ、快く受け入れてくれた。良い大家さんだった。

私はこのアパートで約一年暮らしたが、引っ越してから三ヶ月後に同じアパートに住んでいた現在のパートナーと出会い、また偶然同じヨガ教室に通っていた隣のアパートに住むジュリーはケアンズで一番の親友になった。全く深く考えずに決めた住まいだったが、そこでの出会いが私のその後の人生を大きく変えた。人生何が起こるか本当にわからない。次回は、このアパートで暮らした日々についてご紹介したいと思う。

ケアンズ市内にあるホテル形式の高層アパートメント。2011年5月現在の週家賃は2ベッドルームの部屋で400から420豪ドルだそうです。

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