ボストン通信ブログ

イギリスの正月

マンチェスターの家並み

年末年始をマンチェスターにある主人の実家で過ごした。マンチェスター空港から車で10分ほどの郊外にあるのだが、歩いて10分も行けば小さいながらもスーパーがあり、金物屋、美容院、古道具屋、パン屋、肉屋、郵便局、各種テイクアウトにパブも2軒あって、普段の買い物はそこで充分足りる。空港からマンチェスターへ向かう鉄道の駅もそのあたりにあって、家々もアメリカより小さくて、名古屋で育ったわたしはほっとする。テイクアウトはどこでも必ずある中華やピザに加えて、インド料理、フィッシュ&チップスなど、ボストンでは見当たらないものがある。ボストンの家では一番近いお店でも車で10分、ホームセンターは車で15分かかる。何か切れたからちょっと買ってくるというわけにはいかない。車で10分のところに鉄道の駅があるけれど、これは運がいいのであって、郊外の多くは鉄道など通っていない。歩いて買い物に行けるところというと、かなり街の中に住まなければいけない。

マンチェスターのダブルデッカーバス

マンチェスターのローマ時代の水道跡

アメリカの文化は基本的にはイギリス文化に基づいているとはいえ、クリスマスや元旦の過ごし方は少し違う。アメリカではクリスマスと元旦以外は平常の仕事の日であるのに対し、イギリスでは小売業でない限り、たいていの会社がクリスマスイブから元旦まで休みで、家族そろってゆっくりホリデーを過ごすことができる。ボストンではイブは必ずイタリア系ホストファミリーのセブン・フィッシュ・ディナーで盛り上がるのだけれど、マンチェスターではイブには大したイベントがない。クリスマスのディナーは、ボストンでは丸ごとの七面鳥かハムのローストにマッシュポテトというのが一般的であるのに対して、マンチェスターでは七面鳥の胸肉のロースト、ラムのロースト、ギャモンと呼ばれる燻製のハムのローストにカモの脂を使ってカリカリに焼き上げたポテトが出る。パースニップをカリカリに焼き上げたものも、わたしはマンチェスターで始めて食べた。クリスマス・プディング、ミンスパイ、トライフルといったデザートもボストンでは見かけない。今年は恒例のエリザベス女王のクリスマス・スピーチをちゃんと家族で聞いた。極端に差しさわりのない内容だった。

大晦日はどちらでも大きなパーティがさかんに行われる。大晦日の鐘と同時に花火があがり、シャンペンをあけてお祝いをする。厳粛な除夜の鐘がなつかしくなる。元旦は単に家族が集まる機会のひとつで、主人の家では実家に16人ほど親戚が集まった。元旦用の特別な料理というのはない。今年は誰も大変な思いをしなくていいようにと、中華のテイクアウトだった。おせちが食べたい、お雑煮が食べたいと思う。日本の友だちに「誰もたのんだわけでもないのに自分で選んでアメリカくんだりまで行ったのだから、泣き言はいえないよね」と言われてから気をつけてはいるけれど、食べ物に関してはやっぱり悲しい。

スーパーはマンチェスターのほうが断然品数が豊富である。Satsumaというみかんのようなのも売っていて、うれしい。Satsuma は、ボストンでもオルガニック系のスーパーで見かけるようになったけれども、よく似たクレメンタインと同様、ひからびていて甘みもいまいちである。去年の秋から、近所のローカルなスーパーでエノキだけ、しめじ、まいたけ、エリンギを見かけるようになった。これはマンチェスターでも売っていて、うれしくなる。ボストン、マンチェスターともに、オルガニック系の高めのスーパーに行けば、味噌やのり、日本のお米も手に入る。

近所のオルガニックスーパーで売ってる日本食

近所のふつうのスーパーで売ってるきのこ類

圧倒的な差があるのは、日本食レストランである。ボストンでは日本食はもはや主流といえる存在で、わたしが住む郊外の街でもベニハナ風のバーベキューとお寿司を出すお店を入れると日本食レストランが3軒ある。車で30分ほどのあまり目立たない場所にある、本格的な日本食のお店は、大した宣伝もしないのに週末は大変な混みようで、しかもお客の圧倒的大半がアメリカ人である。ボストンでは、アメリカ人がちゃんとした日本食を理解するようになったのだ。マンチェスターでは Selfridges という高級デパートにあるくるくる寿司がおいしいと聞いて行ってみたのだけれど、甘くて思いっきり固くかためられた寿司米に、ネタも生ものはほとんどなく、値段だけボストンの高級な日本食レストラン並みに高かった。餃子もぼてりと厚い皮につつまれたのが、油で揚げてあった。中華街で日本人が経営するレストランをやっと見つけて、ここの天丼は涙が出るほどおいしかったけれど、お味噌汁はダシの味がほとんどしなかった。ボストンでも10年ちょっと前までは、きちんとした日本食のお店でもこうだった。ダシは生臭すぎて受け入れられないと言われていたのだ。ロンドンではおいしい日本食のお店が増えているというから、もう少ししたらマンチェスターも日本食進化をとげるかも知れない。

パリ経由で帰る途中、シャルル・ドゴール空港でたくさん日本人をみかけた。ボストン便のターミナルの隣が成田便だったのだ。成田行きに乗ってしまいたいと、大きくため息をついた。予想外の強風で2時間余りも遅れて到着したボストンの入国審査で、子供の頃、三沢基地に2~3年いたという審査官にあたり、「おかえり」と日本語で言われて、わたしの旅は終わった。

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