ボストン通信ブログ

ニューイングランド床事情

アメリカ映画やドラマを見ていると、リビングはもとより、ベッドルームまでハイヒールのまま入っていく。スリッパでいるのはベッドとバスルームの間だけのようで、今でも家の中ではほとんど土足という人が多いのだろう。だけど、少なくともわたしのまわりでは、これが変わってきていると思う。

ニューイングランドの冬は厳しくて、雪が降ると砂や塩が道路や駐車場にまかれ、それがくつにしつこく付着する。玄関マットでどんなにこすっても完全には取れない。玄関まわりはどんなに気をつけていても砂だらけになる。夏は夏で、郊外の家はたいてい芝生に囲まれているので、土や芝生の切れ端がくつについてくる。芝生というのはなすりつけられると緑色のしみがついて、薄い色のカーペットだとこれはなかなか取れない。このあたりの家には Mud Room と呼ばれる、タイル張りのスペースが勝手口からリビングの間に設けられることが多いのはこのせいである。

くつをはいたまま家に入っていくと、靴についた砂がサンドペーパーになって、フロアリングはキズだらけ、カーペットには砂がめり込む状態になる。今住んでいる家も、入居したときは、土足のままずっと暮らしてきた家の典型的な状態で、フロアリングは黒いひっかき傷だらけで、カーペットは頻繁に歩かれていた部分の毛がぺったんこになってうす汚れていた。こういうのは掃除をしても絶対に取れない。どうせ傷だらけなのだからと、すべてフロアリングの一階は、土足で歩かれてもあんまり気にならなかった。寝室のカーペットだけはすぐ張り変えてもらったので、くつを脱いでくれる人以外は二階にはお招きしなかった。うちは主人も玄関でくつを脱ぐ習慣の家庭で育っていて、このあたりはわたしとまったく同じ感覚なのが助かる。

フロアリングが無垢材の場合は、表面をけずって仕上げなおすのが可能である。キッチンの改装をしたとき、うちもこれをやってもらった。「埃のでない、新しいテクニック」というのにつられて頼んだのだが、表面を削るのに1日、うわぐすりを塗るのに2日と計3日まったく床の上を歩けなかった上、扉が閉まっていたキャビネットやクローゼット、靴箱にいたるまで、中にものすごく細かいほこりが入り込み、中身をすべて取り出しての大掃除になったうえ、買ったばかりの冷蔵庫のステンレスのドアに10センチの傷をつけられてしまった。それでも鈍い光沢をはなつ床は新品のように美しくて、やっぱりやってよかったと思う。 だから今はキッチンでも土足のまま歩かれると悲しい。最近は、アメリカ人でも大半は頼まなくても入り口でくつを脱いでくれる人が多い。ご近所さんはお互いにスリッパをもってお邪魔するし、厚めの靴下をもってきてくれる友人も多い。けれど「すみませんが、冬は砂がどうしても取れないので靴は脱いでもらえませんか」とスリッパをすすめても、絶対に脱いでくれない人もたまにいる。エチケットの本にも「靴を脱いでほしいときは、招待するときにきちんとその旨を説明するべきである」と書いてある。でも、「今度ご飯でも食べに来ない?」と電話する際に、「ときに、うちでは靴を脱いでね」というのはなかなか言いにくいんではないか。言われた相手にしたってうっかり「ああ、いいね」と言ってしまってから、「靴をぬがなきゃいけないなんて、だったら行きたくない」とはいえないんじゃないか。

カーペットの大掃除にはカーペットクリーニングの業者さんがいるけれども、Rug Doctor という、プロが使う機械の小型版をレンタルすることができる。これは階段などの掃除に使うアタッチメントで布張りのソファなんかもシャンプーできる優れもので、そのまた小型版が家庭用に売られている。「便利」という言葉にやたら弱い私と夫はこの家庭版のシャンプー掃除機みたいなのも買った。だけど一度使っただけで、ほかの便利器具といっしょに地下室で眠っている。もう少しあったかくなったら、今年こそ二階のカーペットを洗おうねと今は話し合っている。でもきっとまたデッキの仕上げとか、庭仕事、野菜畑で、今年もまた「ああ、カーペットをシャンプーするにはちょっと寒くなりすぎたね」ということにやっぱりなるんだろうなあ。

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