ケアンズ通信

25. オーストラリア住宅事情 ~ケアンズで家をリノベーションする(前半)

このエッセーでも前に紹介したことがあるが、オーストラリアでは住宅のリノベーション(改築)が盛んだ。

増え続ける人口に対して常に家が不足気味のこの国では、地震が無く家の耐久年数が長いこともあって、新築を建てる人よりも中古住宅を買ってモダンにリノベーションする人のほうが多い。またリノベーションをして家の価値を上げ、自分が買った時よりも高い値段で再売りするということを職業にしている人達も少なくない。

テレビでもリノベーション関連の番組が頻繁に放映されており、視聴者のカップル四組が決められた時間と予算内で、類似した間取りの中古住宅のリノベーションを行い、オークションにかけて売却額を競うという番組はシリーズになっている人気番組だ。家の構造自体を変える大規模なリノベーションは本職の建設業者に依頼することになるが、壁の色を塗り替える、フェンスをつける、ドアを取り替えるといったことは自分でやってしまう人も多く、オーストラリア人の多くは日本語の「日曜大工」のイメージよりもかなり本格的なことを自分達で行う。

大工用具、リノベーション用具を取り扱うDIYのお店の充実度は驚くばかりで、国内最大手のBunnings Warehouse(バニングズ・ウエアハウス)というDIYチェーン店では、木材、石材等から自分で設置できるシステムキッチンのセットまで実に様々なものが販売されていて、本職の建設業者だけでなく、アマチュアリノベーター達でいつも賑わっている。私にとってはコアラやカンガルーよりもBunningsこそがオーストラリアの象徴のような気がする。と言っても、私がBunningsへ行くようになったのもDと家を買ってリノベーションを始めてからであるが。

建築素材からガーデニング用品まで何でも揃うリノベーターの聖地Bunnings。店内には子供の遊び場やカフェも有り、老若男女を問わずオーストラリア人に人気のお店です。

テレビで見るリノベーションに憧れを抱いていた私は、自分達が買った家をリノベーションするという事態に少しワクワクしていた。私達と同じようにクイーンズランダーと呼ばれる木造高床式住宅を買って既にリノベーションをしていた会社の同僚から”Welcome to the hell”と言われた時も、冗談だと思ってヘラヘラ笑っていた。オーストラリアでは大工、電気技師といった人たちの工賃がとても高く、私達の予算内でリノベーションを完成させるためには、電気、配管工事以外は全て自分達で作業を行うしかなかった。Dは大工仕事で生計を立てていた時期もあるので言ってみればリノベーションのプロだったが、「箸より重い物を持ったことが無い」ふりをしていた私まで、否応無く労働力として組み込まれた。同僚の言葉が冗談ではなかったと気がつく迄に、そう時間はかからなかった。

裏庭から見たリノベーション途中の我が家。

私達が買った家は、一階部は家の正面と左右にはブロック塀があるものの奥には壁が無く、空洞状態だった。クイーンズランダーは熱帯雨林気候に属するケアンズの生活様式に合わせて作られた住宅なので、一階部は空洞にして風通しを良くしているのだが、最近はその部分に部屋を増築する人達も多い。住居となる二階部は、外階段を上がると踊り場が無く玄関のドア、中に入ると横長い12畳程度の居間、その中央に廊下が続き、左右に寝室が各一つ、廊下の突き当りが12畳程度のキッチンダイニング、その奥に短い廊下があって右にバスルームとトイレ、左は裏庭へと繋がる外階段、というシンプルな間取り。外階段が家の正面と裏の両方にあるのもクイーンズランダーの特徴の一つだ。家の購入を決めた時にDは「まず一階部分に部屋を増築して間貸ししよう」と言っていたが、それよりも自分達が暮らすスペースを快適にするほうが先だということになり、二階部分のリノベーションから開始することになった。

築63年の家をモダンに生まれ変わらせるためには、家の基本構造以外全てに手を加えなければならなかった。天井を高くし、壁や天井を張替えて色を塗り、床を張替え、窓枠やドア、電気、ファンを新しい物に取替えた。バスルームの壁にはアスベストが入っていたため業者の人に撤去して貰い、タイル、シャワー、洗面台、全てを新しくした。機能的にするために、キッチンとダイニングのあった場所を入れ替え、部屋を明るくするために、壁を切って窓を二つ取り付けた。予算が限られていたのと、Dの好むデザインが既成の物ではなかなか無かったため、ドア、窓枠、戸棚、本棚、キッチンの調理台や引き出し等をDは全て自分で作った。キッチンの天板には石を使うことにしたのだが、Dが作ったモジュールが石の重さに耐えられるのか、また寸法がピッタリ合うのか、業者の人達が石を運び入れて流し台の上に載せた時にはハラハラした。全てが手作りで、全てが手探りのリノベーションだった。

廊下、ダイニングに床を貼る工程。

元はダイニングだった所に、新しくキッチンを設置。流し台やガスレンジの下となる台をDが手作り。

(後半へ続く)

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