ボストン通信ブログ

アメリカの正当防衛法 - 17歳の命

2005年にブッシュ大統領の弟、ジェブ・ブッシュが知事をつとめていたフロリダ州で “Stand Your Ground Law” という法案が成立した。自分の命が危険にさらされていると感じた場合に、武器をもって防衛する権利を認めるものである。それまで、まず逃げることで危険を回避することが必須とされていたのが、新しい法律下では、身の危険を感じたかどうかにかかわらず、不法侵入者に対して武器をとることができる。また対象となる場所が家からボートや車といった広範囲にまで拡大された。この法律が成立して以来、フロリダ州では正当防衛を訴える事件が3倍にのぼっているという。そのフロリダで17歳の高校生が銃殺された。銃をとった者は正当防衛を主張して逮捕されていない。そして今、アメリカ中で大きな論争が起こっている。

ゲートとフェンスで守られた住宅地に両親といっしょに知り合いを訪ねていた17歳のトレイボン・マーティンは、コンビニにキャンディとジュースを買いに行った帰り道、近所の自警団のキャプテンによって射殺された。車に乗った自警団のキャプテンは、事件の直前まで警察と電話で話しており、録音された会話が残っている。それによると、「不審なものが歩いている」に始まり、警察は「もしかして不審者のあとをつけているのだったら、今すぐやめなさい」と言っている。それに対して「OK」と答えているにも関わらず、その後、事件は起こっている。射殺される直前に、近所に住む人々から警察にいくつか通報があり、「誰か叫びながら走っている。助けてくれと言っているみたいだ」に始まり、「今、銃声がした」「叫び声が止まった」という内容である。撃たれたのはキャンディとジュースと携帯しか持っていない、ひょろりとした童顔の17歳で、撃った本人は銃を持ち、がっしりと背の高い28歳である。撃たれたのが黒人で、撃ったのは白人である。

トレイボン・マーティン

多くの正当防衛の事件と同様、この事件でも目撃者はいない。このため、「身の危険を感じて撃った」と正当防衛を主張している自警団のキャプテンに対して、それを崩す事実がなくて裁判に持ち込めないと警察は言う。トレイボンの両親は何も罪もないのに射殺されたトレイボンのために正当な裁判をと訴えている。

トレイボン・マーティンの両親

"Shoot First"、"Make My Day"とも呼ばれる"Stand Your Ground"またはそれと同様の法律は、フロリダ州だけでなくアラバマ、アリゾナ、ジョージア、アイダホ、イリノイ、インディアナ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシガン、ミシシッピ、モンタナ、ネバダ、ノースキャロライナ、オクラホマ、オレゴン、サウスキャロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ユタ、ワシントン、ウェストバージニアといった23州で成立している。

事件に対する反響の大きさから、司法省とFBIによる捜査が始まり、自警団のキャプテンが訴追をうけるかどうかが4月10日に決定される。

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