ボストン通信ブログ

うちのミツバチ

4月末に届いたうちのミツバチは巣箱の中で着々とコロニーを築き上げている。ひとつの箱には10個のフレームが入っていて、それが二段ぎっちり詰まれば冬を越せる強さをもった巣箱だと言えるのだそうだ。うちの巣箱も無事、二段目を入れたところである。フレームには真ん中に卵から成虫になるまで育てる部分、そのまわりに蜜をためる部分が見られる、典型的な展開を見せている。コロニーが二段目全部に広がって、ミツバチが冬を越すのに十分な蜜をためこむ状態に早くなってほしいのだけれど、このあたりでは花の蜜は7月の終わりに枯渇してしまう。9月にまたひと月だけ蜜が採れる花々が咲くのだそうだけれど、今年はわたしたちがいただけるほどの量の蜜は期待できそうにない。

ミツバチの巣箱

フレームを取出しました

ミツバチ達

ふたつある巣箱のうち、ひとつは発達が遅れていて、冬になる前に2段目までちゃんと埋まらないようだったら、女王蜂を始末して一つの巣箱に統合する必要があると「ミツバチ先生」に言われ、ショックだった。一つの巣箱のミツバチはすべて一匹の女王蜂の子供たちで、その女王蜂の出すフェロモンに囲まれて生活している。ほかの女王蜂が入って来ると戦闘状態になってしまう。だから女王蜂を一匹始末してしまわないと巣を統合できないのだ。昆虫に対して、こんな愛着を持っている自分に、われながら驚いている。

私の住むあたりではまだ起こっていないけれども、南部を中心にColony Collapse Syndromeと呼ばれるミツバチの謎の失踪の被害が広がっている。オーストラリアから輸入したミツバチが持っていたウィルスが広がったとか、携帯の電波がミツバチの帰巣本能を狂わせているとか、いろいろな説があるけれども、養蜂業者がずっと指摘している、農家が使う除虫剤が最大の原因だという説を裏付ける論文が先ごろハーバード大学から出された。

アメリカの農業はほとんどの野菜と果物を輸入に頼り、糖分やガソリンの原料になり、政府から助成金もでるトウモロコシや大豆に専念するという形に変わってきている。巨大な畑で単一の作物を作るというのは自然に反することで、害虫被害の可能性が多大になる。そこで、種の時点から薬剤にくるまれているという新しい種類が導入された。それからすぐ、ミツバチの失踪被害が見られるようになったという。アメリカには大量のミツバチを果樹園に貸し出すというビジネスがあって、巨大なトラック何台にも積み込まれたミツバチが春夏の間、いくつもの果樹園をまわる。ミツバチの失踪被害はそういった業者の中に一番多く、中には廃業を余儀なくされる業者も出ているという。

実は同じような問題がフランスで1990年代に起こっていたのだと”Vanishing of the Bees”というドキュメンタリーを見て最近知った。ミツバチの失踪は新しく出回った農薬のせいらしいということで、養蜂業者が立ち上がり、政府がその農薬の使用を禁止したところ、ミツバチの失踪被害は消滅したというのだ。しかし、アメリカのFood and Drug Administrationというのは基本的に業者が提出するリサーチをもとに許可を行う組織で、この農薬も製造元のBayerが提出した研究結果で無害だと証明されているため、薬剤の禁止には至っていない。Bayerが行った研究というのは、ミツバチをその農薬に数日さらしたけれども死ななかったというだけのものである。養蜂業者によると、被害が出始めるのはずっと後だという。ミツバチが集めてきた蜜や花粉に農薬が含まれていて、どんどん生まれてくる新しい世代がそれを食べて育つ。そういった繰り返しで巣箱全体に農薬の影響が広まって全滅に至るというのだ。ところがそこまで長期間にわたる研究というのが行われたことがなく、養蜂業者の仮説は証明されないまま現在に至っているのだ。ハーバード大学の新しい研究はこれに初めて光を当てるものである。

植物の交配を行うミツバチがいなくなったら人類は数年しか生き延びることができないだろうとアインシュタインは言っている。わたしが行った養蜂教室は、ミツバチ人口を増やすことを目標にあげていて、みんなボランティアとはいえ、みんな熱い思いでがんばっている。

ミツバチの毒素はおなかの中にあって、刺すと針につながる内臓ごと出てしまってハチは死んでしまう。そのため、巣や女王蜂が危険にさらされていると判断しない限りは刺すことはないという。巣箱のかなり近くにいても、緩慢な動きでいれば、ハチたちは人間をまったく無視する。Back Yard Bee Keeperの人たちはそんな忙しく巣箱を出たり入ったりするミツバチを、ワインを飲みながらぼーっと見ているときがが至極の時間だと口をそろえて言う。

このサイトは翻訳学校サン・フレア アカデミーの運営です。

PAGETOP