ケアンズ通信

29. オーストラリア恋愛事情 (その1)

このところオーストラリアの住宅の話ばかりが続いたので、今回からはちょっと視点を変えて、オーストラリアでの「恋愛事情」について話してみたいと思う。言葉や文化が違っても、恋愛の本質には違いは無いと思うが、日本人の私から見ると、オーストラリア人は年齢や容姿を問わず恋愛に対して積極的なように思われる。

まず年齢だが「年甲斐も無く」とか「いい年をして」という日本社会ではよく耳にするフレーズをあまり耳にしないオーストラリアでは、高齢者同士の結婚や、年の差カップルは巷に溢れている。そんな中でも特に驚いた実体験を一つ。

ケアンズのビーチで、皆既日食を待っているカップル

メルボルンに住んでいた頃の話。アルバイトを通して知り合ったサリー(仮名)は40代後半のシングルマザーで、観光業を営むビジネスウーマン。高校生のハンサムな息子と二人暮らしで、私のことを妹のように可愛がってくれ「家族で過ごす日」とされるクリスマスやイースター等には、家族も恋人もいない私が一人で寂しく過ごさなくてもよいようにと、いつも自宅に招待してくれていた。

そんな「家族で過ごすべき日」には、50才過ぎのサリーの恋人と、近くで暮らす70代半ばのサリーのお母さんも招待されるのだが、足が悪いサリーのお母さんは、トム(仮名)という40代後半に見える男性にいつも車で送迎して貰っていた。初めは「トムって介護士さんなのかな」と思っていたのだが、トムに対する皆の話し方があまりにも親しげなので、トムがお母さんを連れて帰った後にサリーに聞いてみた。

「トムって介護士さん? それとも親戚の人?」

するとサリーは大きな目を更に見開いて大笑いしだした。

「何言ってるの?! トムはママのデファクトに決まってるじゃない!」

デファクトというのは入籍をせずに一緒に暮らすパートナー(恋人)のことだ。40代後半のトムと70代半ばのお母さんがデファクト・・・私の周りにも年の差カップルは居るが、さすがに母子程年が離れた二人がカップルだとは全くの予想外だった。動揺した私は「そ、そうなの・・・。もう長い間一緒にいるの?」と、かろうじて会話を続けたのだが、そんな私にサリーは更に追い討ちをかけた。「そうねぇ、10年くらいかしら。でも知り合ってからはもっと長いわよ。だって、トムは私の初めての恋人だったのだから」

娘の昔の恋人と母親が付き合い始める、ハリウッド映画ならともかく、これはメルボルン市内から電車で一時間の片田舎のごく普通の一般庶民の話なのだ。恋愛に年齢は関係あらず。

オーストラリアでも美人でスタイルが良い女性や、ハンサムで長身の男性が「もてる」ことは否定しないが、「容姿を問わず恋愛に積極的」と私が定義するのは、日本ではなかなか見かけないタイプのカップルをこちらでは目にすることがあるからだ。

どんなカップルかというと、女性がものすごく太っていて、男性は細身で見た目も悪くない、というカップル。この場合の「ものすごく太っている」というのは、「私、太ってるからぁ」なんていう日本の女の子を三人まとめたくらい、ものすごく太っているのだ(以後「ものふとちゃん」と略す)。こういうカップルが年配だった場合「女性は若い時には細かったのだろう」と勝手に推測して納得するのだが、そのカップルが未だ若い場合には、どうしても驚いてしまう。

「ものふとちゃん」彼女と細身の彼氏の若いカップルに遭遇するのは週末の夜、彼らがその友達カップル数組と一緒に街を闊歩している時が多い。同じグループの中にはスタイルも良く、見た目もきれいな女の子が必ずいて、肩や背中を大きく出し、体の線を強調した丈の短い服を着ている。そういった場合、同じグループの「ものふとちゃん」もまた、友達と併せるように露出度が高くピチピチの洋服を着ているのだ。ピチピチの洋服は「ものふとちゃん」のサイズを更に強調することになり、大変失礼だが「ボンレスハム」を思い出し、どうしても目が釘付けになってしまう。

もし私が彼女の立場だったら「美しく細い友達の隣に並んで道化みたい」と居た堪れなく感じると思うのだが、当の「ものふとちゃん」とその隣に立つ細いボーイフレンドはそんな風には思っていないようだ。ボーイフレンドは愛しそうに彼女の腰に手を回し(その手は彼女の背骨くらいまでしか届かないのだが)、「ものふとちゃん」も嬉しそうに彼に寄りかかっている。このようなカップルを目にすると「太っていたら恋愛も難しいだろう」なんていう狭い考えを持っていた自分が恥ずかしくなる。高齢になっても、ものふとちゃんになっても、オーストラリアでは積極的に恋愛ができるのだ。

こちらではカップル単位で行動することが多いというのも、日本とは違う点かもしれない。私の誕生日パーティをした際に、前述のサリーとその息子を招待したのだが、「サリーの恋人を招待しなかった」として、サリーの恋人本人から後日、私とサリーは激しく非難された。私はサリーの恋人と数回しか会ったことが無かったし、サリーとその息子と私は三人だけで買い物に行ったり食事に行ったりもしていたので、気心の知れた友人だけのパーティにサリーとその息子だけを招待することは私にとっては自然な成り行きだった。パーティに招待していた他の友人の中にはシングルの人も数人いたので、「恋人がいる人は恋人も一緒に」招待しなければいけないとは全く考えていなかったのだが、サリーの恋人は「パーティには恋人同伴で招待するのがマナー。Mihoが自分をパーティに誘わなかったのは、自分のことをサリーの恋人と認めていないからだ」と激怒した。正直言って私は彼の激怒ぶりに驚いたが、彼のおかげで、それ以降は誰かを食事に招待する時には「パートナーも一緒に」招待するよう気をつけるようになった。確かにこちらでは、会社のクリスマスパーティ等には、結婚してもしていなくてもパートナー同伴で招待される。日本で職場の忘年会に奥さんやガールフレンド(或いはだんなさんや、ボーイフレンド)が招待されると考えるとしっくりこないが、やはりこれも文化の違いだろう。

ではオーストラリアでは皆、どんなふうに恋愛を始めるのか、どのように相手を探すのか。次回はそのあたりのことをご紹介したいと思う。

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