Did you know that?

50.銃乱射事件は終わらないのか

昨年12月、コネチカット州で20名の幼い子供と6名の女性教師が銃乱射事件の犠牲となって、2ヶ月が経った。この事件は、オバマ第二次政権における銃規制強化の大きな引き金となった。

現在アメリカに銃が何挺あるか正確には分からない。3億挺とも4億挺とも言われている。正に3億1000万の国民全員が1挺以上持っている換算になる。しかし、我が家には銃がないし、夫の両親も私の友人も銃を保持しているという話は聞いたことがないので、きっとある人、ある家族には複数の銃があるのだろう。

アメリカの銃による死者数は、自殺も含めると一日に平均34名にもなる。これは、イラクやアフガンでの戦死者数の比ではない。では、毎日30余名もの銃による死者がでているのに、これらの事件がニュースにならないのは何故だろう。

私がアメリカに住み始めた1980年代、夜のテレビニュースでは、毎日殺人事件(殆ど銃による)が報じられていた。そしてこの事件は、私の住む地方での殺人事件であって、他の州の事件は含まれていなかった。いわゆる多くの人を巻き込んだ銃乱射事件などでなければ、私には他の州で起きている殺人事件をニュースで知ることはなかった。結局後で気づくことだが、全国50州で起きた1日の殺人事件を毎日ニュースで流すことなど不可能だったのである。日本では、全国で1、2件の殺人事件がおきると、数日間その経緯や人間関係、友人や近所の人の話までニュースとなる。30数件(日によっては50件かもしれない)の殺人事件を夜のニュースで報道できる訳がないのである。

私がアメリカに住んで、今まで銃事件を身近に感じたのは、十数年前我が家の近所で起きた事件だった。

ある日、我が家から数ブロック離れたところで何台ものパトカーや救急車のサイレンの音がけたたましくなっていた。あまりに長く続くので、何だろうという興味はあったが、 次馬的に見に行くのは気がひけた。

事件の翌日、隣家の友人を誘って、どの家で何がおきたのかちょっと見に行こうということになった。もちろん事件なので、余程ドンパン撃ち合わなければ証拠など残っているはずはない。我が家の裏手の5軒程先の家で、ドライブウェイ(ガレージ前の駐車スペース)を水で洗っている男性がいたので、事件のことを聞いてみた。

<ppcf>「昨日この当たりで何か事件ありましたか。ずいぶんパトカーが来ていたみたいですけど」
「それは、我が家、つまり事件はここで起きたんだよ。今私がこのように生きてこのドライブウェイを洗っているのが不思議なぐらいだ」</ppcf>

男性は話を続けた。前日夕方家に帰ってきて、車をドライブウェイに停め、玄関のカギを開け家に入ろうとした。ところがカギは既に開いている。奥さんも子供も出かけていて家にいるはずはないと思っていたので、ちょっと不安に思ったが、ドアを開けた。杞憂が驚愕に変わった。数人の知らない男たちが、家中を物色していたのである。男性はすぐにドアを閉め全速力で逃げた。すると一人の若い男が追ってきた。 顔を見られてしまったと思った彼は、ズボンのポケットから銃を取り出し男性を撃とうとした。銃声が聞こえたと思った瞬間、男性は自分が撃たれたと思ったそうだ。しかし、男性を撃ち殺そうとした泥棒の方が倒れてしまった!泥棒は、銃を取り出そうとしながら誤って引き金を引き、自分自身を撃ってしまったらしい。当りどころが悪くそのドライブウェイで死んだそうだ。男性は、その死んだ男の血痕を一生懸命洗い流していたのだった。もちろんこの事件は、ニュースとして話題になることはなかった。落語のネタにでもなりそうな何とも間の抜けた事件だったのだ。

夫の知人の息子は、父親の持つ銃を触っていて、誤って自分の膝を打ち抜いてしまいスポーツができなくなってしまった。このような、いわゆるニュースにはならない銃による事故や怪我は、アメリカではどれ程おきているかわからないし、把握できないのではないだろうか。

以前夫の知り合いが銃の話をしていたので、彼に銃を持っているのかと聞いた。彼は街中に住んでいるし、熊などの動物が襲ってくる心配もないのに、自慢そうに銃の話をした。私は、初めて銃を持っているという人に会ったので、驚いて尋ねた。

<ppcf>「スティーブ、家に銃があるって言うけど、どうして銃をもっているの」
「ここは街中だけれど、我が家は敷地も広く隣とは離れているので、何かあった時には、困るからね」
何が困るのかよく分からなかったが、
「それもそうね。でも小さい子供もいるのに何処に銃をおいておくの」
「それは大丈夫。銃は夫婦の寝室のクローゼットの中に入れてあるから、子供が触ることはないよ」
「でも、もし間違って触ったら危ないじゃないの」
「こちらも万全だよ。銃の弾はガレージにおいているので、怪我するようなことはないよ」</ppcf>

私は、どうしても腑に落ちなかった。アメリカだから、泥棒が銃を持って家に入ってくることもあるかもしれない。しかし、弾の入っていない銃で、どうやって自分をそして家族を守るのだろう。弾をガレージにとりにいっている間に、銃を持って抵抗すると分かれば、その前に撃ち殺されてしまうだろう。

銃は何の為にあるのか……。
野生の動物が襲ってくる可能性があるところに住む、あるいは狩猟目的で使う。またスポーツともゲームとも言える射撃も人気がある。しかし、それ以外の銃保持は、人を殺す為のものだと私は思う。もし自分が銃を持っていたとしても、到底人に向かって発砲することなどできない。ブルブル震える手で銃を構える前に撃ち殺されてしまうだろう。両手を上げて無闇な抵抗はしない。もし、怪しい人が家の周りにいたら、警察に連絡する。これがアメリカに住みながら、私のできる精一杯のことだろう。

2007年に私は「未成年者と犯罪」というエッセイを書いた*-1。その年の4月、ヴァージニア工科大学で、韓国系アメリカ人が起こした銃乱射事件は、学校関係としては最悪の32名が殺された 。多くの人が銃規制に拍車がかかるのではないかと期待した。それから5年以上が経つが、一般人を巻き込んだ銃乱射事件は後を断たない。銃規制も進んではいない。昨年も、5月にはワシントン州シアトルの喫茶店で男が銃を乱射して5人が死亡した。7月には、コロラド州の映画館で銃を乱射し12人が死亡、58人が負傷した。コネッチカット州の事件2日前には、私の住む街で、クリスマスの買い物客でにぎわうショッピングセンターに入ってきた男が、買い物客2人を射殺した。

このような事件がどれだけ起きたとしても、アメリカでは、「銃保持が憲法で保証されている個人の権利である」と言う主張が衰えることはない。又不思議なことだが、過去において、どの大統領選挙でも銃の規制について公約が掲げられたことはない。NRA(National Riffle Association-全米ライフル協会)の影響力の大きさ、又銃保持者の票を逃さない為だろう。

しかし、このような状況の中で、コネチカット州の小学校事件の後、オバマ大統領は涙ながらに銃規制に全力を注ぐと公約したことは記憶に新しい。また、大統領は、1月の大統領就任演説(Presidential Inaugural Address )、及び2月の一般教書演説(State of the Union Address )においても銃規制に対する強い意志を表明した。2011年1月にアリゾナ州で頭部を撃たれ重体となったガブリエル・ギフォーズ(Gabrielle Giffords)*-2も、先日人々の前で、不自由になった言語で、銃規制について一生懸命支持演説をした 。

建国200年以上、銃工場で作られ、店や展示会などで売られた3億挺もの銃を今さらどうやって収受できるのか。今後売られる銃に関しては、過去の犯罪歴や精神病歴を調べて売る。鉄砲はいいが乱射ができるライフルは売らない等の案が、どれ程今後の犯罪を防げるのかは誰もわからない。

私は銃を買ったことがないので、銃弾に関しては販売に規制があるのかどうか分からない。しかし私は、銃販売に加え「銃弾」を売ることにも大きな規制を作るべきだと思う。弾がなければ、3億挺の銃もライフルもただの鉄の固まりだからである。

アメリカ人の人種偏見に対する意識は、1863年リンカーンの奴隷解放宣言から100数十年を経て少しずつ変わってきた。銃規制も、人々の意識が変化していくのには、それ以上の時間がかかるのかもしれない。

犠牲になった子供たちや教師の命が無駄にならないことを祈りたい。


<アメリカの銃販売店>
http://matome.naver.jp/odai/2130480834398310201
銃は「Gun Show-銃展示即売会」でも購入できるが、販売店よりも身元の調査などが甘く、入手しやすいといわれている。


<日本のモデルガン販売店>

日本にもモデルガンショップがあって、本物を売っている店かと思った。

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