ケアンズ通信

30.オーストラリア恋愛事情 (その2)

10年前37歳の時にオーストラリアへ来た私は、正真正銘、血統書付のシングルだった。オーストラリアへ来た目的は翻訳・通訳の勉強のためではあったが、心の底では「オーストラリアで素敵な男性と劇的な出会いをして、人生逆転満塁ホームランを決めてやるのだ」と密かに野望を抱いていた。が、こちらでの生活が始まってみると、現実はそんなに甘くないということがすぐにわかった。当時の私のフラットメートの女性にも、その女友達にも恋人がいなかったのだ。フラットシェアが始まって数週間経った頃、フラットメートとその女友達と恋愛の話をしていると、彼女達から「もし誰かが言い寄ってきたとしても、それはあなたが魅力的だからではなくて、何でも言うことを聞くアジア人だと思われているからよ。気をつけなさい」と、嬉しくもないアドバイスを頂いた。ちょっとムッとしつつも「みんなどんな所で恋人を見つけるの?」と聞くと、「飲みに行って見つけるに決まってるじゃない」と呆れたように言われ「今度Mihoを飲みに連れて行かなくちゃ!」と私を口実に飲みに行く画を立て始めた。

数日後の金曜日、フラットメイト、前述のフラットメイトの友達、そしてまたその友人女性2人と私の計5人で「飲みに」出かけた。「飲みに行く」というのは、日本の居酒屋のような所を想像していたのだが、私達が行ったバーでは食事も出てこなければ、座る椅子も無い。誰もがカウンターや、いくつか置かれている高い丸テーブルに寄りかかって、談笑しながら、ひたすらお酒を飲むのだった。金曜日の夜とあって店内はすごい人で、お客さんは会社帰りのOLやビジネスマンが多いようだった。丸テーブルを囲んで、フラットメイトとその友達々は、私のわからない話をしては笑い転げていた。周りのグループもそれぞれのグループの中で話しが盛り上がっているようで、「これでどうやって恋人が出来るの?」と不思議で仕方が無かった。私は雰囲気に圧倒され、喧騒の中で皆の話(英語)を聞き取れず、たまに話しかけられて答えても皆に私の英語が伝わらず、とても居心地が悪かった。また肌の露出度が高く、いつもよりもずっと厚化粧の連れや周りの女性達に比べ、Gパンにセーターに薄化粧という「いかにも貧乏留学生」的な装いだった私は、その場で完全に浮いていた。食事が出ることを期待していた私は空腹と居心地の悪さから、初のバー体験を楽しむ余裕すらなかった。一時間半くらいした頃「Miho、そろそろ帰りましょうか?」フラットメイトから言われた時は彼女が女神に思えた。「え~、もう帰るの?まだ夜は始まったばかりなのに」連れの友達が言うのを相手にせず「彼女達に付き合ってたら、ここで夜を明かすことになるから」とフラットメイトは小さな声で私に言って私の手を引っ張って出口へと歩き始めた。すると、それまでは全く私達に興味がなさそうに見えた周りのグループのビジネスマン達が「もう帰るの?」「君、日本人?」「こっちで一緒に飲もうよ」と口々に話しかけてきた。私は「おぉ、来た来た~!この展開を待っていたんじゃないの?これって恋人作りの始まりなんじゃないの?今、帰っちゃってよいの?」的視線をハウスメイトに送ってみたが、ハウスメイトは「バーで知り合うオトコなんてろくなのはいないのよ」と私にささやいて、周りには「ごめんね~。明日も仕事で早く起きなくちゃいけないの~」と笑顔を振りまき私を引っ張ってバーを後にした。後日一緒にバーへ行ったフラットメイトの友達に「あの後バーで何か有ったの?」と聞くと、「あの夜はハズレ。ろくなオトコはいなかったわ」と言っていたが、その後彼女は何度かバー通いを繰り返し、そこで出会った人とデートをしているようだったので、「飲みに行く」ことは時として恋愛を生むのかもしれない。私はその後、小学校の時に習った二宮金次郎のように勉学とアルバイトに勤しみ、バーへ一緒に行ってくれるような地元の友達もできず、日本人の友達にはそれぞれ恋人がいたので「飲みに行って恋人を作る」ことは実現できなかった。

オーストラリアで恋人を作るには「飲みに行く」以外にどういう方法が有るのか?周りの友人達に今の恋人或いは結婚相手との馴れ初めを聞いてみると「ハウスメイトとして出会った」「旅先で知り合った」「カフェで声をかけられた」「仕事の取引先だった」「パーティで知り合った」「友達の紹介で」等様々だ。「会社の同僚として知り合った」というケースは日本と比較するとずっと少ないようだ。英語で言うところの”high school sweetheart“、高校時代から付き合っていた人と結婚した、婚約しているというカップルも少なくない。有名なプロスポーツ選手の中にもガールフレンドは”high school sweetheart“という人が結構いて、それを聞くと「有名になっても田舎のガールフレンドを大切にしているのは立派」と私はその選手の即席ファンにならずにはいられない。

ここ数年、オーストラリアで恋人作りの手段として最も人気なのは何と言ってもインターネットだろう。メルボルンに暮らしていた頃、日本人の年下の女友達から「インターネットで知り合った人と付き合い始めたから紹介したい」と言われた時には「インターネットで知り合った?出会い系サイトで知り合うなんて、胡散臭い男にひっかかったんじゃないの?!」と心底心配した。彼女とその新しい恋人との初めての面談に臨んだ時は、友人よりも年下の背の高い金髪男性を「友達は騙せても私は騙されないからね」と腕組みをして思いっきり睨みつけた。ところが、しばらく話をしてみると、彼は友人との交際を真剣に考えており、知的で話も面白く、芸術的センスも有り、とても素敵な青年だということがわかってきた。「どうやってあんな素敵な人見つけたの?そのインターネットサイト私にも教えてよ!」私の態度は一変し、私も彼女達が出会ったというインターネットサイトへ登録をしてみるのだった。

友人が教えてくれた無料のインターネットサイトを通して、数人の男性と数度のメールのやり取りの後、カフェでお茶を飲んだりしてみたが、私の場合は友人の場合とは違って、恋愛に発展する相手を見つけることは出来なかった。インターネットサイトには真面目に恋人探しをしている人も数多く登録しているが、そうでない人の数も同じくらい多く、「恋愛」に長けていない私にはその見極めが難しく、新しい人と次々に会うのは面倒くさかった。「今の彼に会う迄に何人の人と会ったの?」と前述の友人に聞いたところ「十数人」と聞き、「あぁ、私にはその忍耐力は無い」とインターネット恋愛は諦めることにした。

現在のパートナーDとは、ケアンズの同じアパートの隣人同士として駐車場で出会った。私も彼もメルボルンからケアンズに越してきたばかりで友達がいなかったので、お互い「本命が現れるまでとりあえず」と付き合い始めたのだが、何の因果か家を一緒に購入し、一緒にビジネスも始めてしまい、別れるのが難しくなってしまった。人の縁と言うのは本当にわからないものだ。

「スーパーマーケットは出会いのチャンスが多いのよ」と誰かが教えてくれた。聞いたのは既にDと付き合い始めた後だったので、自分で試してみるチャンスは無かったが、確かに一人分の買い物をしている人はシングルだろうし、同じ時間に買い物に行けば、同じ人に繰り返し会える可能性も有る。インターネットよりも信頼出来て、ロマンチックな出会いの方法だと思う。日本ではどうかわからないが、オーストラリアでシングルの方は、ぜひお試しあれ。

では、出会った恋人たちの次の展開はどうなるのか。次回はオーストラリアの結婚事情についてご紹介したいと思う。

オーストラリアで人気のインターネット出会い系サイト。テレビ広告もされており、真剣に出会いを求める人達の多くが利用しているようだ。

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