ケアンズ通信

31. オーストラリア結婚事情

オーストラリアでは、結婚という形を取らずに一緒に暮らしているカップルが日本に比べると圧倒的に多い。シェアハウスという共同住居スタイルが社会的に確立しているため、他人との同居は普通のことであるし、シェアメイト同士の関係からガールフレンド、ボーイフレンドの関係に変わることだってある。

そういった環境の元、「結婚前の同棲」に目くじらをたてる親も少ないし、社会的にも同棲しているカップルが後ろ指を差されることもない。長い間同棲していても結婚という形式を取らないカップルが多いのは、離婚をした親を見てきた子供世代に、結婚に対する憧れや幻想が無いからかもしれない。また、結婚している、していないことによる社会の優遇制度や差別が無いことも「非婚同棲カップル」が増殖している原因だろう。

ケアンズのローカル新聞 Cairns Postの土曜日版には、最近結婚式を挙げたカップルが紹介されている。

オーストラリアでは一緒に暮らすカップルはディファクトと呼ばれ、法的にも結婚をしているカップルと同等に扱われる。例えば財産分与等もディファクトカップルには結婚しているカップルと同様の権利が与えられているようだし、オーストラリアの永住権を持っている恋人と一年以上一緒に暮らしている外国人には、通称「ディファクトビザ」と呼ばれるビザが与えられ、ゆくゆくは永住権を取得することもできる。オーストラリアで暮らしている日本女性の中にも、このディファクトビザから永住権を取得した人が少なくない。(注1)

子供が出来ても籍を入れないカップルが多いので、子供と片親の名字が違うということも多い。兄弟のうち兄は父の姓、弟は母の姓なんていうこともあって、名前を聞いただけでは兄弟とは判別できない。こういうカップル数組に「どうして結婚しないの?」と聞いてみたが、「私たち家族は今のままで十分幸せ。結婚という形式を取る理由が見当たらない」という回答が多かった。

結婚に対する考え方も日本とは違うが、離婚に対する感覚も日本とは違う。日本では「家庭内離婚」「子供が高校を出るまでは子供のために離婚をしない」といった話をよく耳にするが、オーストラリアでは「うまくいかない夫婦が一緒に暮らすより別れたほうが子供のため」と考える人が多いようだ。女性の社会進出が進んでいること、シングルマザーに対する社会保障がしっかりしていることも、日本に比べて離婚しやすい要因ともいえるだろう。子供がいる夫婦が離婚する場合、母親が子供を引き取り、父親は週末に子供たちに会う権利を与えられるというケースが多い。子供たちは母親の家、父親の家にそれぞれ自分たちの部屋や玩具を用意されていて、両家を行き来している。後に母親、若しくは父親に恋人ができる、或いは再婚するケースも多く、そうなると子供たちは母親の恋人やその子供たちと一緒にキャンプに行ったり、父親の家では新しい奥さんの連れ子も一緒に住んでいたりと、状況は複雑になってくる。

継母や継父、異母兄弟(姉妹)や異父兄弟(姉妹)に囲まれる家庭環境は私などにはわかりにくく、理想的な家庭環境とも思えないが、子供たちの多くは状況、環境に順応し、血のつながりの有る親族や、そうでない新しく出来た家族との間で関係を確立することを自然に学んでいるようにも見える。

こういうオーストラリアの社会環境は、日本人の感覚では「モラルが欠如している」ようにも思えるが、一概にそうとばかりも言えない。オーストラリアでは日本と比べると不倫カップルがずっと少ない。訴訟社会のオーストラリアでは、不倫しているとなると離婚裁判で不利になり、財産分与や親権等にも影響する。「不倫するなら相当の覚悟を決めてから。不倫するくらいなら先に別れたほうがよい」と考える人が多いようだ。現在オーストラリアのABCテレビで放送中の人気のファミリードラマ「The Time Of Our Lives」でも、登場人物の一組の夫婦が別れることになった時、周りの家族や友人達は「残念だけれども本人達が決めたことなら」と干渉しないが、「別れたいと言い出した男性には実は愛人が居た」とわかるやいなや、周りの人たちは男性に対する怒りをあらわにし、男性の両親や兄弟さえも男性に対して批判的な態度に変わる。「不倫は文化だ」というフレーズが日本で流行ったことがあったが、オーストラリアでは通用しないようだ。

熟年カップルの結婚式。結婚するのに年齢は関係ない。(写真提供:Cairns Showkai)

結婚しないカップルが多い一方、何度も結婚するカップルも少なくなく、また結婚年齢も気にしないようでもある。何歳になっても、何度目でも、結婚したい人は結婚する。地元の新聞の週末版に「私達、結婚しました!」といった写真と記事が毎週掲載されるのだが、20代から70代まで花嫁花婿の年齢は様々だ。三十年近くディファクト関係だった私の知人は、男性が70歳になったのを機に結婚式を挙げた。「元気なうちにウエディングパーティをしておきたいから」というのが理由だった。もちろん若い時に結婚したカップルの中にも何十年と連れ添っているカップルも少なくなく、スーパーマーケットや公園などで、高齢のカップルが手をつないで歩いている様子を目にすることがある。思わずこちらの頬も緩んでしまう美しい光景だ。 結婚という形式にはとらわれないが、結婚するのであれば年齢は気にしない。離婚に対しては寛容だが不倫に対しては否定的、といったところがオーストラリア結婚事情であろうか。

数日前、知人から結婚式の招待状が届いた。ケアンズのグレートバリアリーフの島で結婚式を挙げるとのこと。透き通る青い海をバックに白い砂浜の上での結婚式、きっと最高に美しいウエディングになることだろう。今から楽しみにしている。

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