ボストン通信ブログ

胸をはって、日本

小さい時からたいていのことを「あ、そうか」と信じる子供だった。「赤ちゃんはお父さんとお母さんが神様に願いしたらお母さんのおなかに入って、10か月したらお母さんのおなかがぱかんと割れて生まれてくるんだよ」と言われると、「そうかあ」と言うといった具合だ。小学校の3年か4年のときには、3歳下の弟に「だましがいのないやつ」と言われた。それは基本的に変わっていなくて、今でも「そうかあ」を頻繁につぶやき、単純に感動する。先ごろテレビで見た「Leaders」にも感動した。豊田喜一郎がトヨタ自動車を立ち上げ、盛り上げていく様を描いたドラマだった。豊田佐吉の伝記は小さいころに読んだ記憶があるけれど、喜一郎の話はまったく知らなかった。自動車をつくると決めた時から社内で「そんなとてつもないことを始めたら会社がつぶれる」と反対され、戦時中は軍部から戦争に役立つトラックしかつくらせてもらえず、戦後はトラックをつくることで戦争に協力したというのでGHQに会社を潰される一歩手前まで行き、戦後のインフレの中でメインバンクを含めた全部の銀行に融資を拒否され、日銀を説得して融資を獲得したらそれまでしたことがなかった人員整理を強制され、それで工場で働く従業員がストライキを起こすといった具合に、その道のりは並々ならぬ厳しいものだったと知った。

トヨタの地元で、トヨタやその関連会社、下請け会社で働く人たちが身の回りにすぐ見つかる環境で育ったせいもあって、アメリカに住む今でもトヨタ車以外は絶対に買わない。去年夫が車を買い替える際にも、トヨタ車を選ぶように何度も口をはさみ、それは信念のようにこだわっている。そういう下地があったこともあり、豊田喜一郎の物語は、日本人としてものすごく誇りに思った。

日本のマスコミでは「これでは外国に笑われる」といった記述をよく見かける。先の東京都議会のヤジ事件でも、今でもこんな女性蔑視のヤジが飛ぶなんて、外国に笑われるといったように。だけど、少なくともアメリカではそんなことはほとんど報道されることはない。アメリカに住んでいて、「あ、日本人として恥ずかしい」と思うことはほとんどなく、一番最近そんな思いをしたのは、こちらのドラマでアニメの主人公のような服装をした日本人の女の子がふたり出てきたときくらいである。逆に日本に尊敬の念を抱くニュースはよく見かける。一番最近はワールドカップで日本チームが負けた後、サポーターが清掃をしていったというニュースだった。そして、これはマイナーではあったけれども、日本が70年も守り続けた平和憲法を捨ててしまった一件。70年間もほかのどこにもない平和憲法を持っていたのに、何でそれを捨ててしまったのかというアングルだった。

日本はもっと自信を持ってほしいと、わたしは声を大きくして言いたい。傲慢になってほしくはないけれども、日本の持つユニークさにもっと気づいて、胸を張っていてほしいと思う。 たとえば、家の中に入る前にくつを脱ぐという習慣。日本でもこの頃、欧米風にくつで家の中を歩き回る家庭があるらしいとドラマで見て、びっくりした。ニューイングランドあたりでは、アメリカ人でも家の中をくつのまま歩き回るのはやめたほうがいいと言い始めている。外の汚れや黴菌がくつの底にくっついたまま、家の中に、寝室にまで入ってくるし、砂や土は木の床に細かい傷をいくつもつけてそれが黒い汚れになる。カーペットにはそんな砂や土が奥深くまで入ってしまって掃除機でもなかなか取れなくなってしまう。だから日本人でなくても、特に冬の雪が積もっているころは、スリッパを持って友達の家を訪問する人が増えている。

夫はいつも日本人の健康に対する興味の度合いに驚く。テレビの番組で健康問題を取り上げることが多く、それを積極的に人々が実行しようとするのを見て、「日本人の平均寿命の長さはこういうところからも来ているんだなあ」と感心している。アメリカで健康問題を取り上げる番組と言ったら、たいていは朝や昼間に放映されるもので、多くの人の目にはつかない。去年、初めていっしょに大河ドラマ「八重の桜」を見て、19世紀半ばに女性でありながら銃の使い方を習い、自ら銃をとって戦い、日本赤十字社の設立にもかかわったこんなすごい女性がいたということを歴史の授業でで教えているのかと聞かれた。

まわりの目を気にするのは、みっともないことはするなという価値観に基づいたもので、それはそれで日本のよさでもあるとは思うが、心の底に日本に対する自信をもっと強く持っていてほしいとつくづく願うこの頃なのだ。

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