ボストン通信ブログ

Great British Baking Show

アメリカの公共放送 (PBS) のかなりの部分をイギリスBBCの番組が占める。ノンフィクション・ベストセラーリストにも登場した超ヒット番組「ダウントン・アビー」はもとより、BBCの新旧のコメディもたくさん放映されている。そんな中、最近、夫といっしょに「Great British Baking Show」というのにすっかりはまっている。

グレート・ブリティッシュ・ベイキング・ショー

12人のアマチュアが、ケーキ、パン、ペストリー、クッキー、デザートなど、毎週違ったカテゴリーで3つの作品に挑戦する。4年前に義妹が「お菓子作りはこれ一冊あれば大丈夫」と太鼓判を押してくれた「Baking Bible」の著者メリー・ベリーと有名 (らしい) シェフのポール・ハリウッドが審査して、毎週最下位の一人が落とされていき、最後にもっとも優秀な人が選ばれるという内容だ。参加者の職業は大工、エンジニア、グラフィックデザイナー、学生、退役海軍軍人とさまざまで、年齢も幅広い。時間が制限される中、出された課題で難度の高いものを作り上げるプロセスでは、予想できないアクシデントもあり、どきどきの60分である。

メリー・ベリー

毎週、一つ目と三つ目はサブカテゴリーを与えられ、二つ目は全員が同じものを作ることで技術がテストされる。たとえば今週のデザートの一戦では、最初がソース入りプディング、二つ目がティラミス、三つ目がベークトアラスカだった。プディングは食べるまで中のソースの状態が見えない。外側がきちんと焼けていて、ソースは固まることなくちゃんと液体であることを見極めてオーブンから絶妙のタイミングで出せるかどうかが勝負である。外側が破れてソースがあふれてしまっていたり、切ってみるとソースが固まっていたり、底が生焼けだったりといった問題が、試食の時点で指摘される。ティラミス対戦で配られるメリー・ベリーのレシピでは、コーヒーの量、飾りつけのチョコレートを何度まで熱するかといった詳細が割愛されていて、そのあたりは自分で考えないといけない。アメリカで一般的な3層のものではなく、メリー・ベリーのティラミスは5層。ロールケーキの生地のようなのを焼いて、それを1センチほどの厚さに切るのがまず大変である。各層に多からず少なからずのコーヒーシロップを均等にかける。リコッタチーズのクリームは同じ厚さに塗る。一番上にはチョコレートで作った飾りつけを乗せる。すべての層が同じ厚さで、切っても中身が同様で、コーヒーシロップが下にたまっていないことが重要である (と審査員が言っていた)。そこまで完成度の高いものは、制限時間のある状況ではなかなかできない。三つ目はベークトアラスカといって、アイスクリームをケーキ生地で包み、外側はメレンゲで飾る。アイスクリーム作りも含めて、すべてを4時間で仕上げる。アイスクリームの材料も、メレンゲの飾りつけのデザインもさまざま。この収録が行われた日はイギリスでは「暑い」25度で、アイスクリームの入ったケーキを素早く仕上げるのが大変だった。挑戦者の一人のアイスクリームを誰かが冷凍庫の外に出したまま放置して、アイスクリームがとけてしまうというハプニングもあって、かなり感情的になる一戦だった。

ベークトアラスカ

ティラミス

学校の給食でも必ずデザートが出て、しかもそれがものすごくおいしかったと夫が言い張るイギリスでは、お菓子作りはとても身近なものなのだろうけれど、ふつうの職業を持った人たちが、ここまで多様なお菓子やパンを、ここまで見事に作るというのは驚異である。メリー・ベリーの400ページ近くのレシピ本を持っていながら、4年間でロールケーキとマドレーヌをそれぞれ一度作っただけというわたしには信じられない。

お菓子作りもとても上手で、つねにチョコレートやキャンディがバッグに入っている母親と、チョコレートがベッドのわきに置いてある父親を持つ夫は大の甘党である。義妹は一人で買い物に出かけるときのランチはケーキだというし、この家はみんなそろいもそろって甘党である。だからこの番組をひざを乗り出して見入る夫は今にもよだれを垂らしそうな顔をしている。

イギリス、アメリカ、日本と、材料の名前、計量や温度の単位も違う。アメリカでは普通の小麦粉は強力粉で薄力粉というものはなく、Cake Powderというのにはベーキングパウダーが含まれている。粉砂糖はアメリカではConfectioners Sugarで、イギリスではCaster Sugarである。イギリスのレシピによく出てくるSultanaというのは白ブドウのレーズンで、ふつうの干しブドウはCurrantsである。計量の単位は日本とイギリスではグラムやリットルで、アメリカではポンドやオンス。オーブンの温度は日本とイギリスでは摂氏で、アメリカでは華氏である。だからなかなかわからないのよね、という言い訳をわたしはもう10年以上も使っている。本当はアバウトな性格のため、正確さが要求されるお菓子やパン作りはなかなかうまくできない。だけど、見るのは好きだし、食べるのはもっと好きだ。

すべてのエピソードが PBS のウェブサイトで見られるようになっています(こちらをクリック!)。お楽しみください。

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