ボストン通信ブログ

Respect

去年の8月、武器を持たない18歳のマイケル・ブラウンが警官に射殺されたことで、ミズーリ州ファーガソンで暴動が起こってから、武器を持たないアフリカ系の人々が警官に命を奪われるという事件は次から次へと起こっている。そして、これまでそのすべての事件で警官は無実の判決を受けている。「被害者が抵抗した」、「命の危険を感じだ」と警官は訴える。相手を倒すためだけなら足を撃てばいいではないかとか、6-7発も撃つ必要があったのかとかいった議論は出てこない。命の重さが違う。

住民の67%がアフリカ系であるファーガソンの警官のうち、50人が白人であるのに対し、アフリカ系の警官はわずか3人だという。法務長官エリック・ホールダーが命令した捜査では次のことがあきらかになった。

-2012年から2014年にかけて交通違反で車を止められた中でアフリカ系は85%
-そのうち90%が交通違反通告を受けている
-警察に逮捕されたものの中でアフリカ系は93%
-腕力を伴う逮捕の88%がアフリカ系に対するもの

車のバックライトが作動していないなどの些細な違反で罰金刑を通告し、そういった行為が市の税制を賄うために通常的に行われていたことがわかった。警察内部のメールから、「黒人は同じ仕事を長く続けられないからオバマも4年間大統領などつとまらない」といったジョークも見つかり、ファーガソン警察の人種差別の根深さがあらわになった。それでも解雇は一人、停職処分が二人出ただけだった。数日後所長が辞職したけれど、これは辞職なので1年分の給与が支払われるという。

イスラエル首相ネタニヤフとベイナー下院議長

そんな中、昨今のオバマ大統領に対する扱いは、共和党内でも物議をかもし始めた。イスラエル首相ネタニヤフが共和党に招待され、3月3日にアメリカの議会で演説を行った。今週首長選を迎える首長を、アメリカの法律では大統領が招くことはできない。それを大統領も議会も通さず、共和党の下院院内総務ベイナーが招待したのだ。前代未聞である。大統領には会わないまでも、演説中、ネタニヤフは共和党議員のスタンディング・オベーションを何十回も受け、これは先週行われたイスラエルの総選挙に大きく影響を与えたと言われる。

これは共和党が、オバマ政府がイランと原子力開発に関する交渉を行っていることに対する反対を明示するものである。イランは宗教に基づいた政治をしているということで、アメリカでは圧倒的に敵対視されている。サウジアラビアも宗教に大きく左右される政治をしているうえ、施政者が王族なのにその扱いは違うので、イランがほかの中東諸国と違ってアラブ系でないことが原因なのか、70年代に起こったアメリカ大使館人質事件がいまだに尾をひいているのか、よくわからないけれど、イランは圧倒的に敵対視されている。オバマの民主党はそのイランと原子力開発に関する条約を結ぶことでその武力を抑制しようとヨーロッパ諸国とともに尽力している。一方、共和党は条約でイランが原子力を武器に使うことを防ぐことは絶対にできないから、武力で押さえつけるべきだというスタンスを崩さない。これがネタニヤフの主張とまったく重なるため、今回、議会に招かれたのだ。

この一件は、先週、1月に共和党議員になったばかりのトム・コットン上院議員がイランあてに書いた「現在オバマ大統領が締結しようとしている条約は共和党が政権を取ったとたんに無効になる」という趣旨の手紙に47名の共和党議員が署名するという事件に発展した。署名したのは、共和党上院議員リーダーのミッチ・マッコネル、前大統領候補マッケイン、今度の大統領選に出馬すると見られるテッド・クルーズ、ランド・ポール、マルコ・ルビオ等である。政府が条約提携を働きかけている相手国に対して、政府を通さず、反対の意思を手紙で公表するというのは、まったく前代未聞である。これには共和党内でも反対を唱えるものが出た。政府に対する訴えに10万人以上の署名が集まったら、政府はそれに対応しなければならないという法律に基づいて、「47名の議員は反逆罪で起訴されるべきだ」という訴えに、すでに16万人以上の国民が署名してもいる。

トム・コットン上院議員

歴代の大統領の中で、ここまで権限を軽視された人はいなかった。共和党がここまでの行動を起こせるのは、それでも支持者を失わないという確信があるからだと思う。ほかの地域で人種差別はないということではないけれど、共和党の支持層が多い地域はより明確な人種差別が起こっている地域と一致しがちである。オバマ大統領が白人だったら、ここまでのことは起こっていなかったと思うのだ。

初めてオバマ大統領に会ったとき、テレビカメラの前で堂々と大統領の批判を繰り広げて以来、不仲だと言われているネタニヤフがイスラエルで首相として続投する。ネタニヤフは「自分が首相である限り、パレスチナ建国は絶対に許さない」と公言している。これには、ユダヤ系アメリカ人でこれまでイスラエルを支持してきた人々も反対の声を上げ始めた。イスラエルとパレスチナの間で平和条約締結をめざしてきたオバマ政権は、ここでもまた苦境に立たされる。オバマ大統領に対する共和党の「前代未聞」はまだまだ続くと思われる。

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