ボストン通信ブログ

人生の先輩

大学のキャンパスでのレイプが大きな問題になっている。アメリカにはキャンパスに学生寮がある大学が多く、できるだけ多くの行事に参加できるようにキャンパスに住むことが奨励される。そんな中、キャンパスで行われるパーティで事件が起こる。正体がなくなるほど酔っぱらった女の子が被害者になる。その多くは事件を届け出ないという。届け出ても、キャンパス・ポリスが「まあそこまで酔ってたらなあ」といった反応をするとも聞く。酔っていてもいなくても、レイプは絶対に許されない。けれど、自分が飲めるお酒の量を知っていたら、少しは役に立つのではないかと思う。

高校を卒業するころ、わたしはお酒に対する注意、男の子に対する注意を、友達のお兄さんと従兄から教わった。10歳上の友達のお兄さんはハンサムでモテモテで、妹だけでなく、彼女の家で一晩中大騒ぎするわたしたちまでとてもかわいがってくれた。そんなお兄ちゃんが、ある晩、友達とわたしを行きつけのバーに連れて行ってくれた。「お酒で失敗しないように教えてくれるんだって」と友達に言われ、わくわくしながらついて行った。まだ大学の入学式前だったと思う。初めて入るバーにどきどきした。「今日はへろへろに酔っぱらってもいいから、好きなだけ飲みなさい」と言われて、ピンクレディやバイオレットフィズといったカクテルやビール、コークハイを飲んだ。「カクテルは甘くて飲みやすいけど、ものすごく強いからすぐ酔っぱらう」とか「ビールはアルコール分が低いし、お腹がふくれるからわりと安全」といったお酒のレッスンを受けた。同時に「18歳から20代半ばくらいの男はそれしか頭にないんだから、絶対に信用するな」と教えられた。「カクテルばっかりすすめる男がいたら、すぐに席をかわれ」とか「車は動く密室、アパートは動かない密室。絶対二人きりになるな」とも教わった。親から言われたら素直に聞けなかったであろうことも、実践をつんだ 大好きな友達のお兄ちゃんからだとすんなりと受け入れることができた。わたしはこの晩、後にも先にもないほどお酒を飲んだのを覚えている。カクテル2-3杯、ビールも2-3杯飲んだ後、コークハイを5杯飲んだ。もともと飲めないわたしが、あの晩なぜあんなに飲めたのか、いまだにわからない。

12歳上の従兄はあからさまなことは一言も言わなかったけど、「お酒は気を付けて飲めよ、ほんとに気を付けるんだぞ」と何度も言われて、お酒ってそんなに危ないものなんだと思った。

こうしてわたしは数々の合コンもビールと氷がとけてどんどんうすくなっていくコークハイで通し、友達といっしょに遊びにいった男の子の部屋でスクリュードライバーを出されたときはすぐに家に帰った。気持ちがいい状態を超えるほど飲むことはなく、気が付くと酔っぱらった友達の世話をしていて、自分は寄っている場合じゃないことが多かった。これは社会人になっても同じで、会社の行きつけのバーでは、私が飲めないことを知っていて2杯目からこっそりウーロン茶に変えるなどの気遣いをしてもらっていた。

お酒をたくさん飲まなくても、あやしい薬品を飲み物に入れられてしまったら意識を失ってしまうこともあるわけで、これだけで安全に過ごせるとは言えないけれど、友達のお兄ちゃんと従兄がくれたレッスンは絶対にわたしを救ってくれたと今でも思っている。(友達のお兄ちゃんからは「女の子は続けてフラれるとフラれ癖がつくから気をつけろ」という、「うーん、それはでも難しいなあ」と思うようなアドバイスもあった)

知り合いの大工さんからもお酒のいい話を聞いた。彼の家では、父親が夜だまって酔いつぶれるまでお酒を飲んでいて、お酒は酔うために飲むものだと思っていたという。それが高校時代に知り合った奥さんの家では、みんなで食事をしながらワイワイ楽しく飲んでいた。十代の子供たちにも「家以外では絶対に飲まない」という約束でビールやワインを飲ませてくれたそうだ。お酒って酔うためのものではなくて、楽しむものなんだと知ったのは、自分にとってものすごく大事なことだったと言う。だから自分も同じように子供たちやその友達に家でビールやワインを飲ませているのだそうで、「そうすれば自分がどれだけ飲めるかもわかるし、大学に入ってからバカ飲みして酔いつぶれる可能性も減るしね」と言っていた。

来年の春、大学に入る姪にも、こんなレッスンをくれる存在がいたらいいと思う。親ではなく、もう少し年が近くて、確実に経験を積んでいて、素直に話が聞ける存在。今度帰るとき、義妹にわたしの経験を話してみようかと思う。

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