Did you know that?

67. 全米同性結婚合法化に思う-後編

同性愛者が、何故「結婚という法的な証明」を欲していたのか?世の中には、一緒に住み、結婚せずにパートナーとして、時には子供を産み育てる男女もいる。しかし、結婚によるお互いの法的保護の恩恵は意外に大きい。まず、結婚しているか独身かで所得税の支払いが大きく違う。これは日本でも同じであると思うが、扶養家族が多くなればそれだけ安くなる。アメリカでは、健康保険加入も重要な問題である。どちらかが働いていない、働いていても健康保険がでない、あるいは失業した場合など、保険に関しては、車、家の保険なども単身で入るか夫婦(夫夫、妻妻)で入るかでは、違ってくる。共に生活し築き上げた財産(多くの場合、遺書により解決できる)、親からの遺産相続などの問題もある。しかし、同性愛者が最も憂慮していたことは、不慮の事故などで危篤状態になる、病気や老衰で亡くなるなど、死に直面したときの権利の問題だった。病室で、伴侶あるいは家族以外は入室を禁じられ泣く泣く病室外で待機しなければならない。また緊急処置の判断が、家族以外は許されないなどがある。

6月27日付け The Wall Street Journal
婚姻届けを出し喜ぶ同性結婚者たち(写真左:オハイオ州コロンバスで、婚姻届けを出し、その支払いを終えたMindy RossとJimmie Beallのレズビアンカップル。写真右:ダラス在住のGeorge Harris 82歳とJack Evans 85歳のゲイカップルは、同棲生活54年目でやっと結婚できた。)

夫と親しい女性大学教授は、大学時代からの女性のパートナーとずっと暮らしている。東海岸からポートランドの大学に職を得た時も、パートナーも一緒に引っ越してきた。パートナーもこちらの銀行に職を得、2人で悠々自適の暮らしである。レズビアンであることを隠すこともなく(隠す必要もなかったのだろう)、いろいろな集まりに二人揃って参加する。私には、当時、そのような人たちに偏見があり、ゲイやレズビアンであるということは、家族間の秘密で、決して公にするものではないと思っていた。

彼女たちは、4年程前、同性結婚が合法となった別の州(オレゴン州では、2014年5月合法化)で婚姻届を出した。40年近く一緒に住んでいるパートナーと築き上げた生活全般、また今後のことを心配してのことだったらしい。

しかし、異性間で結婚しても離婚する人が数多くいる中、彼女たちは40年も共に暮らしてきた。結婚という形をとっていれば、金婚式を迎えることだってあったかもしれない。このような彼女たちが、同性愛者であるが故に受けられない法的差別は、私でも不平等だと思った。

アメリカの同性結婚論争も1970年ぐらいから紆余曲折の時代が長くあった。アメリカで初めて連邦最高裁の判決を受けて、同性結婚賛成派勝訴の判決が確定したのは、2004年5月にマサチューセッツ州でのことだった。オレゴンでは、同時期2004年5月に同性結婚が認められ、3000人以上の同性結婚が承認されたが、翌2005年4月には住民投票の結果、この権利は剥奪された。

同性結婚を認めた最初の州が現れてから、2番目のコネチカット州までに4年程の月日がかかった。しかしそれ以降、同性結婚を認める動きは思いのほか速く進み、最近の2年間だけで、同性結婚は、「少数派の問題」から、米国50州のうち30州で認められる「多数派の権利」へとなり、今日に至った。

オレゴンは、全米でも最もリベラルな州の一つである。2009年から2012年までポートランドの市長を務めたサム・アダムス(Sam Adams)は、ゲイであり、パートナーの名前も公表していた。彼は、当時の選挙で、この地方の有能なビジネスマンとして名の通った日系人の候補者と市長選を争った。ポートランド住民がどちらを選ぶのか興味津々だった(市民権をとっていない私には、選挙権がない)。夫と私は、この日系人の候補者と親しかったので、彼を応援していたが、比較的ハンサムな白人ゲイ市長が誕生した。

今年になって少し脚光を浴びたのは、オレゴン州知事、Kate Brownである。彼女は、前州知事の女性スキャンダル辞任によって後任に選ばれた。彼女は、男性と結婚していたが、自分が「バイ・セクシュアル」と公表したのである。話題にはなったものの、知事業務には何の関わりもないことのようだ。

世界中でコンサートを開き、由紀さおりさんとの共演で日本でも有名になったピンク・マルティーニ(Pink Martini)のリーダー、トーマス・ローダデイル(Thomas Lauderdale)もゲイだ。私は、2011年の東日本大震災の救済コンサートで一緒に仕事をした時、彼の人柄、仕事と人望に敬服した。(参照:37.オレゴンから愛をこめて「From Oregon with Love」)私にゲイやレズビアンという差別意識を完全になくさせたのは、彼だったかもしれない。

ポートランドで開催した東日本大震災の支援コンサートにて
トーマス・ローダデイルと由紀さおりさん

また、先日女子ワールドカップで優勝したアメリカチームの一人、アビー・ワンバック(Abby Wambach)は、2013年に、ハワイで同性結婚をしている。彼女は、サッカー女子の世界最多得点数を獲得した選手だ。ワールドカップが放映された日本でも、そのシーンは写されたのではないかと思う。アビーは、優勝が決まった瞬間、観客席に飛んで行き、「wife—妻」と呼ぶ女性と壁を挟んで熱い抱擁を交わした。彼女は、ニューヨークのチームに所属しているが、普段はポートランドに住み、カリフォルニアとニューヨークを拠点に活躍している。

Sports Illustrated アメリカ女子サッカーチーム特集の表紙
右から2番目がアビー・ワンバック

ところで、私は、結婚してアメリカに移り住んで間もない頃、義父に自分の娘がレズビアンであることをどう思っているかを尋ねたことがある。
「お義父さん、自分の娘がレズビアンであって、これから結婚しないことをどう思いますか?娘に孫は望めないのですね」というようなことを言ったと思う。結婚したばかりの私が、如何に無知蒙昧、不遜な態度だったかと思うと今でも恥ずかしい。義父は私に対し怒りもせず、そして何も答えもしなかった。

我が家の親しい親戚に大金持ちの家族がいる。弁護士の夫に美人の妻。女男女と3人の子供がいる。3人とも幼稚園から少数クラスの私立の学校に通った。長女は、どちらかと言うとボーイッシュで、小さい頃からスカートをはいているところを見たことがなかった。高校に入っても髪も短く(アメリカの女子高校生にしては珍しい)、いつもジーンズにTシャツを着ていた。

大学に入って親元を離れ生活し始めた彼女は、自分の「性」の問題を公にした。レズビアンの問題ではなく、自分が女性ではなく「男性」であると……。つまり、自分が「性同一性障害(Gender Identity Disorder, GID)で、「これからは男性として生きる」と、フェイスブックに公表した。最も驚いたのは、親がつけた名前も男性の名前に変えたことだった。今から3年前、彼女はまだ23歳だった……。
   両親はその子の意志を尊重し、娘が自分で命名した男性名で呼び始めた。私にそれができるだろうか?違う名前に変えた我が子を許せるだろうか?なんと寛容な親だろうと思った。
 それが原因であったかどうかは分からないが、その後この子の両親は離婚した……。

自由の国、同性結婚も自分の性を変えることも自由。そして、それを自分の誇りとして、自信を持って公表できる国。今、アメリカは、全国民がそれを容認する国となった。

全米で同性結婚が合法となった今、多くのカップルの届け出があることだろう。
そして、同性結婚者たちも様々な方法で子供を産む、また養子縁組などをして、育てることも多くなっていくかもしれない。

しかし、その家庭で育つ子供たちには、「Mother and Father、Mommy & Daddy—父母」という言葉はあるのだろうか……。

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