Did you know that?

68.マス・シューティング(銃乱射事件)とは?-①

10月初旬、オレゴン州南部の大学内で、10人の死者をだす銃乱射事件がおきた。
“Horror in Roseburg: 10 minutes, 10 deaths in Oregon's worst shooting”と呼ばれ、10分間に10人の死者がでるオレゴン最悪の銃乱射事件であったにもかかわらず、11月に入った現在、そのような悲惨な事件があったことさえ忘れられたかのように話題にもならない。

銃乱射事件が起きたのは、10月1日、私が住むポートランドから約290キロ南方に下った人口2万人余りの小さな地方都市でのことだ。アンプクア・コミュニティカレッジ(Umpqua Community College)という短期大学で、クリス・ハーパー・マーサー(Christopher Harper-Mercer)という26歳の男が、教室内で9人を殺害し、7人に重軽傷を負わせた大量殺人事件だ。本人も警官に射殺されてしまったので、殺害理由など詳しいことは分かっていない。教室内で、殺害する前に「クリスチャンは、立て!」と言い、正直に立ったキリスト教信者が殺されたということが報道された。私が分かっていることはこれだけである。

オレゴンの田舎町にある普段は静かで美しい“Umpqua Community College”は、一瞬にして地獄と化した。


“Umpqua Community College”の銃乱射事件で出動した警官


追悼式

この事件が起きた時、私は家にいた。何気なくつけたテレビに「Umpqua Community College, Mass shooting」と、状況を映し出した速報が放映されていた。「また起きた、銃乱射事件!何処なの?」「Roseburgって何だか聞いたことがあるけど……」、広いアメリカ、どの州で起きているのか見当もつかない。すぐにインターネットで調べてみると、「Umpqua Community Collegeは、なんとオレゴン州南部の短期大学ではないか!!ひぇ〜〜」

私は、既にアメリカの銃乱射事件について2回記事を書いた(第9回:未成年者と犯罪、第50回:銃乱射事件は終わらないのか)。これらの記事を書いていた時、私の中には、アメリカの銃乱射事件の悲惨さと銃規制の緩さに対する怒りがあった。子供たちも現地の学校に通っていたので、いつ自分の子供たちだってこのような事件に巻き込まれないとも限らないと思うと、人ごとではなかったのだ。そして、当時の私には、ニュースなどで報告がある間、悲惨さの中にも、将来、アメリカの銃規制が進みどうにかなるのではないかと言う希望があった。

しかし、今回、テレビから流れてくる放送に対しては、「ああ、また起きた。本当にどうしようもないな、この国は……。可哀想な学生たち、その家族や友人たち……」と言う諦めの溜め息がでただけだった。
 その後、テレビはつけていたが釘付けという状態ではなく、他の仕事をしながら、時々状況を確認する程度だった。そして、私の興味なさと比例するかのように、1週間程経った時には、オレゴンでの報道さえ全くなくなってしまった。

夫に、
 「銃乱射事件だって、最近は報道の期間も短く簡単になってきているわね。重大事件でも、皆に直ぐに忘れられてしまうみたい」
 と話すと、夫は私に聞いた。
 「寿美、“Mass Shooting”の意味を知っている?」
 「えっ?それどう言う意味?“銃乱射による大量殺人事件”という意味でしょ?一度にたくさんの人が銃で殺されるってことよね」
 「アメリカでは、“Mass Shooting”の意味は、“1つの事件で、銃によって4人以上が事件に巻き込まれ、死者あるいは怪我人が出た場合を言うんだ。そしてこのような“Mass Shooting”は、全米で毎日のように起きていて、殆どが話題にならないんだよ」
 「え〜っ!そうなの?知らなかった!」

夫は、私に最近出たデータだと言って“Mass Shooting”のリンクを見せてくれた。そこには驚くべき事実があった!!

見出しは、
994 mass shooting in 1,004 days: this is what America’s gun crises looks like”−—(10月2日現在。その後も銃乱射事件は増え続け、見出しの事件数、及び死傷者数は日々変化している)
2015年10月2日、オレゴンでの事件が起きた翌日にでたデータだが、アメリカでは、2013年1月から、2015年10月1日までの1004日間に、994件の「銃乱射事件」が起きたという報告だった。

「えっ、これ何かの間違いじゃないの?だって、これだとほとんど毎日何処かで銃乱射事件が起きているってことじゃないの?ニュースだって、新聞だってそんなこと何にも報告がないわよ」
 「マスメディアも、学校関係、教会、モールや映画館など、たくさんの人が集まったところで起きた事件、あるいは特別なケース等は全国放送で流すけれど、家庭内、友人間で起きた個人的な銃乱射事件は、全く問題にしないみたいだ。それよりも事件数が多過ぎて、その地方で起きた事件をその日のニュースで流すのが精一杯だよ」

私が初めてアメリカに住み始めた1980年代半ば、インターネットなどの情報が得られなかった時代、私は、毎晩テレビで放映されるこの地方で起きた事件にただただ驚き、漠然と「この国は銃で人を殺し合う恐ろしい国だ」というイメージを持っていた。私は、「平和な日本から何という国に引っ越してきたのだ……」とも思った。事実、自宅の近所でも銃事件が起きたことがある。

しかし、私にとって“Mass Shooting”という言葉が、アメリカ生活の中で現実のものとなってきたのは、1998年、オレゴンのスプリングフィールドという田舎町で、15歳の男子生徒が起こした銃乱射事件の時だった。彼は両親を殺した後、自分が通う高校に行き、二人を殺害し25人に重軽傷を負わせた。この事件がオレゴンで起きたこと、学校で起きたこと、この状況がテレビでずっと放映され続け、数週間後まで追跡調査、犯人逮捕状況、家族や友人関係のことまでが報道されたことにより、私の銃に対する考えはもっと切実なものに変わった。アメリカが銃社会であり、アメリカに住んでいる限り、このような事件に巻き込まれる可能性があると覚悟したのを思い出す。

 

では、銃乱射事件が殆ど毎日起きているアメリカで、4人以下の死傷者は年間どれ程いるのだろうか?
 Kelly Report:“Executive Summary The State of Gun Violence in America” によると、毎年10万人が銃事件に巻き込まれ、約3万人が死亡している。そして、この死者の半数は30歳以下の若者であることだ。

2012年12月にコネティカット州、Newtownで起きた The Sandy Hook Elementary School 銃乱射事件は、幼い子供たちが大勢殺された事件として記憶に残っている。20人の幼い子供たち、6人の学校関係者と犯人の母親が殺された余りに悲惨な事件だった。

しかし、このような悲惨な事件でさえ、アメリカ社会にとっては何の学習にもならない。その後3年間に、アメリカ国内では、50以上の学校で銃による事件が起きている。生徒同士の争い、自殺や意図しない発砲を含めると70件以上もある。これはアメリカ中で毎月3件以上の“School Shootings”が起きていることになる。
 2014年に6月には、私の住むポートランドのダウンタウンからわずか30キロ程離れたトラウトデール(Troutdale)のレイノルズ高校(Reynolds High School)でも銃事件が起きている。15歳の男子生徒が自宅にあった銃で14歳の学生を殺害し、教師に怪我をさせ、自分も自殺した事件だった。

「Everytown for Gun Safety」によると、学校内での銃撃事件が最も多いのは、ジョージア州であり、The Sandy Hook Elementary School 銃乱射事件後だけでも10件が起きている。

ジョージア州では、2014年4月、米国史上最強の「銃保持法」が成立した。学校や教会、行政庁舎、バー、ショッピング街、空港の駐車場等に、条件付きで銃の携帯を認める法だ。“Georgia ‘guns everywhere’ law ”「銃どこでも法案」とでも呼ぶのだろうか。州知事は、「この法案は、我々の自由を再認識する素晴らしいものだ。住民は家族を守り、銃を携帯できる場所が増える」と強調した。
 この州知事は、自分の州が全米で最も学校内銃撃事件が多いということ、その理由が、銃が巷にあふれているからだという関連に気づかないのだろうか?

ジョージア州には、デルタ航空の本拠地で全米一利用者の多いアトランタ空港(Atlanta International Airport)がある。考えるだけでも恐ろしい……。

Atlanta International Airport

銃による事件、事故、乱射事件、多くの幼い命が犠牲になっても、多くの若者たちが命を落としても、「銃保持が我が身を守る」と考える人が数多くいる現状は、私には信じ難い。

(69.マス・シューティング(銃乱射事件)とは?-②に続く)

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