Did you know that?

73. トランプ大統領選出—我が家の場合

ドナルド・トランプが次期大統領に選出され、数週間が経とうとしている。

我が家の家族も親戚も友人たちも随分落ちつき、この現実を受け止めざるをえないと思い始めている。

アメリカ大統領選挙日、2016年11月8日朝、夫は、ヒラリー・クリントン初の女性大統領が誕生するだろうと、不安を抱きながらも希望を持っていた……。 その安易な考えが打ち砕かれるのは、早かった。西海岸に住む私たちにテレビで届く東海岸の情報は3時間遅れで、我が家で選挙情報を見始めた時には、既にクリントン側に「暗雲が立ち込めていた……」と言うぐらい民主党支持家族にとっては悲惨な状況だった。

*ライン会話:
 東京に住む息子と娘から、インターネットで選挙戦情報を確認しながらラインが入り始めた。このラインは、家族全員で共有しているものだ。下記は、夫と子供たちのライン会話。

「……。」
「America……」
「I’m going to cry…」
「Me too. I’m, flabbergasted]
「I can’t believe… It’s happening]
「And both the senate and house are red!!!!]
「20 million people on Obama care are going to be on the streets without medicine…」
「I can’t believe Washington State might vote for Trump…]
「This is ridiculous!」
「Seattle hasn’t come out for Washington yet…」
「Ah I see」
「So it should go back to blue for」
「OK, good!」
「We should have expected this…」
「It proved how much I don’t understand about the majority, the mass, the normal America… and humans in general for that matter. A lesson to be learned…」

と……、このライン会話は簡単な文章だけを取り上げたが、長い文章もあり、夫と息子、娘3人の英語でのやり取りは、トランプ勝利のどうしようもない無念さ、ジレンマをお互いに癒していた。

*夫の家族:
 夫は民主党支持者だ。これは夫の家族全員が民主党支持者で、幼いころから家庭教育として受け継いできたものだろう。そして、我が家のアメリカで生まれ育った子供たちも夫の影響をしっかり受けた。

西海岸のアメリカ大学関係者の90パーセント以上は、民主党支持者と言われている。大学教授である夫の同僚や友人の殆どが民主党支持で、集まっても共和党批判で盛り上がる。そのような中で育った子供たちである。

トランプ大統領勝利の選挙戦翌日からは、夫の家族は電話、あるいはスカイプでその無念さを何時間も語り合った。また、夫の学生たちも我が家に立ち寄り、嘆いた。その内の一人Aimeeは、この夏まで日本の中学校で英語を教えていた。トランプ選出が決まると、どうにもやるせなく、一晩中泣いていたと言った。翌日、「反トランプデモ」に参加する為に、ポートランドにやってきた。その帰りに我が家に寄った。一緒に晩ご飯を食べながらも、どうしようもないジレンマに時々涙ぐんでいた。

*デモ行進:
 私の住むポートランドは、バリバリのリベラル都市だ。この選挙後の市民の動きはすざましかった。トランプ大統領を容認しないと言うデモがあちこちで始まったのだ。デモは全米で一番大きく、デモの様子がテレビで放映され、日本のテレビにもでた。夫の授業を取っている何人かの学生もこのデモに参加した。

*Anti-Trump Town Portland(反トランプ街—ポートランド):
 ポートランドにはいくつかのミックネームがある。『City of Roses, Bridgeport, Stump Town』などである。人々は穏やかで、近年『全米で一番住みやすい良い街』として有名になって来た。
 私は驚いた!ポートランド市内でこのようなデモ行進が起きること、それ程この町はリベラルなのだと!!

夫の学生でデモに参加した一人が、その様子を夫にメールで克明に記し送った。その内容を要約すると、「人々は節度を持ち静かにデモ行進を始めた。しかし、群衆の中に、いつの間にかその静けさを破る人々が他から入り、騒動を起こし始める。デモがRiot(暴動)にかわって行く。人々が怒鳴り始めると、それを止めようとする人がいる。次第にもみ合いの暴力になり、なじりあい、その内に道沿いにある車のディーラーの自動車を壊し始める……。警察官が出動する。逮捕される……」

ポートランドのデモ行進と暴動

*マイノリティ・ヘイトクライムが表面化:
 今まで押さえられてきていただろう「マイノリティへのヘイトクライム」が、選挙後すぐに始まり、ヒスパニック、イスラム教徒、黒人、アジア系、性的マイノリティ(LGBT)の人々が、肉体的な被害を受けたり、ヘイトスピーチで蔑まれたり、民族主義的な落書きの標的となった。被害者の声、映像、文書がフェイスブック、インスタグラムに投稿され、ニュースでもその悲惨さが放映された。「白人至上主義者」の人々が、「アメリカからのマイノリティ追放、廃絶」「自分たち白人以外を受け入れない」と主張し始めた。

その状況が入った「リンク」が息子と娘からラインで私に送られてきた。
大学の寮で、白人女性が、同室のヒスパニック女子学生への嫌がらせとして、部屋の真ん中に物を並べ、壁を作っている写真。路上で、男性数人に押し倒され怪我をした黒人女性の動画。

 *子供たちからのライン:
「This is legitimately terrifying」
「お母さん、気をつけてください。さすがにポートランドではないと思うけど」
私:「選挙戦以来、我が家ではテレビをつけていないので、全く知らなかった…… 」
「It is terrifying! Already my Taiwanese friend who lives in New York was told to go back home by someone on the street.」
「お母さん、本当に、くれぐれも気をつけてください!」
私:「はい!お母さんもアジア人だ〜、気をつけます!!」
子供たちには、アジア人である母親のことが、私本人より心配だったのかもしれない。

私には、その後何も起きなかったが、もし自分がイスラム系だったら、ヒスパニックだったら、どのように嫌な目にあったかわからないと思った。このような現象が大統領選挙後どうして起きるのか、私は増々混乱した。

*トランプの結婚離婚:
 もし日本の総理大臣が2回離婚し、3回結婚した人だったら……。その結婚相手がファッションモデルや有名美人女優で外見が人並み以上の美しさを持った人ばかりだったら……。そのような結婚歴を持つ人が大統領?
 この国では、子供たちも親の離婚再婚話には慣れっこか?白人美人至上主義者?私の妬みか?

*人として、どうふるまうべきか:
 私はヒラリーとトランプの3回のディベートを見た。3回目のトランプはひどかった。ヒラリーが質問に答えている時、トランプは、檻の中にいるゴリラのように後ろをウロウロし、じっと座って人の話が聞けない。まるでADD(Attention Deficit Disorder- 注意欠陥障害)でもあるかのような行動だった。その上、彼の女性蔑視行動に対した質問には、「私は全女性を愛し、尊重している」と言いながら、ヒラリーが何か言うと「You nasty woman!嫌な女だ!」と横やりを入れなじる。私は、このような振る舞いをする人が、どうして大統領候補ディベートの壇上にいるのかを理解できなかった……。人として、普通の良識があると思われている人が、このような態度をとることが信じられなかったのである。
 しかし、トランプ支持者の多くが、これは彼の策略だったと言う。策略?私は、我が子にも学校の生徒たちにも「正直であれ、人に対して誠実であれ!」と教えてきた。この国で、この言葉は「死語」なのか?

*トランプ支持者:
 アメリカの選挙システムは、日本でも情報が行き渡っているが、Electoral Vote(州の総合選挙人獲得数)とPopular Vote(実際の投票数)の2種類があり、最終的にElectoral Vote数で勝敗が決まる。今回ヒラリーはPopular Voteではトランプを上回っていた。つまり投票総数では、ヒラリーが勝っていたことになる。しかし、今のアメリカ選挙システムでは、何の役にも立たない。「システム自体を変えるべきだ」と言う声も多いが、遅々として進まない。どの国も同じだ。

トランプ支持、共和党支持者はアメリカの中央部の州に住み、白人中心社会でキリスト教信者、白人至上主義者が多い。いわゆるマイノリティや(LGBT)の人口は少ない。

これらの人々の心をとらえたトランプの作戦とは:
①移民によりあなたたちの平和な暮らしが脅かされる。職を失った人々は、不法移民により職を奪われている。不法移民を排除すれば、あなたたちの暮らしは良くなる。メキシコとの国境に壁を作る。
②今、この国が、あなたの暮らしが良くないのは、今までの政府が悪い。政治家が何もしてこなかったからだ。ヒラリーはその政治に長い間関わってきた。ヒラリーが大統領になっても、あなたの生活は良くはならない。私は、今まで一度も政治に関わったことがない!!だから、私にはこの国をまた世界一にする力がある。

女性蔑視の映像、また連邦政府の税金を18年間も払っていないことが、ディベートで議題に上った。しかし、トランプのように、上記のようなことを繰り返し繰り返し言い続ければ、有権者は、女性蔑視も税金未払いも他のこともな〜んにも問題ないと思うようになるのだろうか?今まで全く政治に関わったことがない70歳の男性の方が、国を繁栄させ、自分たちの暮らしをよくしてくれると思うのか?どうしても腑に落ちない。

Electoral Vote地図。色としては赤い部分が多く見えるが、この「青い部分の総合投票数」は、ヒラリーがトランプを220万票上回った。この地図を見ると、如何に青い部分に多くの人が住み、赤い部分の人口が少ないかが分かる。

*大学の国への反抗:
 オレゴン州は、リベラル、つまり民主党支持派が強い「Blue State」だ。
夫の大学では、大学全体で「Sanctuary Campus」というポリシーを選挙後すぐに取り入れた。これは夫の大学ばかりでなく、全米の多くの大学で採用された反政府運動の一つである。

大学を「聖域」と考え、誰にも侵すことのできない神聖な場所とした。トランプ政権が打ち上げるであろう、不法移民の排斥、追放、またイスラム系住民の登録制度などに従わない。学生たちを守る義務を遂行する。これはオバマ政権が掲げてきた政策である、大学に登録をしている学生であれば、不法移民であろうと短期滞在であろうと、どの人種、宗教、どの国の出身でも排斥、逮捕、国外追放などしない。次期トランプ大統領の指示方針であっても従わない。
 下記は、選挙後、大学の学長が大学職員全員に出したメールの冒頭の1部分である。

“We as a community share a commitment to the protection and support of all of our students, regardless of immigration status, national origin, religion or any similar characteristics. Therefore, we declare that Portland State University is a sanctuary campus dedicated to the principles of equity, diversity and safety.”

私は、このメールを夫から見せられたとき、これでこそアメリカ!アメリカの素晴らしさだと思った。大学が先頭を切って「平等、人種の多様性、そして安全を守る!」

*アメリカの新聞社:
 この選挙期間、全米の新聞約100社は、1社を除きヒラリー支持を訴え続けた。これは何故か?トランプは、選挙期間中、嘘八百を並べ立てのし上がってきた。新聞はあくまで真実を伝える義務を持つ。トランプの嘘を真実の記事として載せる訳にないかなかったのだ。では、その新聞の影響はヒラリーにはなかったのか?

残念ながら、アメリカの新聞はインターネットの普及後、ニューヨークタイムズ(New York Times)、ワシントンポスト(Washington Post)など大手の大都市新聞以外、風前の灯のような状態になり経営不振や廃業に陥っている。

今、国民のほとんどが新聞を読まない時代になってきている。共和党支持者が多いRed Statesは特に、人口も少なく、テレビが主流、今はインターネットで情報を得る。誰でもどこでも好きな情報を載せ、自分の好きな情報のみを読むことができる。つまり「真実を伝える」というメディアは消えかかり、全ての判断が自分に任されると言う「メディア恐怖の時代」になってきているかもしれない。将来を担う子供たちは、何を真実だと受け止めていくのだろうか?

*Seth Meyers:
 アメリカのメジャーテレビ局NBCに「Late Night with Seth Meyers」というトークショーがある。このSeth Meyersは、俳優であり、コメディアンでもある。強烈な民主党支持者で、毎晩ヒラリーをサポートし、トランプを皮肉り笑いを誘った。

彼が、トランプ大統領選出が決まった後言った内容が面白い。

 「僕は、この18ヶ月間『トランプが大統領になることは、決してない!!』と言ってきた。でも、僕は今日、自分の予想が完全に間違っていたことを認める!!でも、もう一つだけ予想させてください。
 「トランプは、きっとひどい大統領になる!」

彼はその後続けた。
 「『トランプは、きっと立派な大統領になる!』だって、僕のトランプに関する予想は完全に外れるからね!」

ナイトショーの観客からは、割れんばかりの拍手喝采がわき起こった。

夫も私もSeth Meyersの予想が外れることを願っている……。
 New York Cityなどの幾つかの市が、自分たちの市を「Sanctuary City」にすると宣言し始めている!
下記のリンクは、ニューヨーク市長Mayor Bill De Blasioのスピーチのほんの触りの部分だけであるが、ご紹介したい。

https://www.google.com/amp/pix11.com/2016/11/21/we-will-not-comply-nyc-mayor-defies-potential-trump-policies-in-campaign-like-speech/amp/?client=safari


アメリカの大学生が演じる歌舞伎公演案内のチラシ
右の画像ををクリックすると拡大表示します。

このサイトは翻訳学校サン・フレア アカデミーの運営です。

PAGETOP