セネガル通信

第30回 クリスマス考(2)

自家発電機の煙突

最近、停電の回数が少し減ったような気がする。「あ、停電だ!」と即座に分かるのは、もちろん、夜になって照明をつけている時だけだけれど。一瞬真っ暗になって3秒後くらいにまた明るくなるのでそれと気づく。
 昼間であれば、その“印”がないので、停電の不便さもあまり意識せずに済むのだが(実際は、大量の食糧を備蓄する公邸としては、電気がなくて冷蔵庫冷凍庫が作動しなければ本当に困る!)、時々、自家発電機の所の細い煙突の蓋がパカッと開いて、ゴーという音が聞こえたかと思うと、グレーの煙を吐き出し始めることから、停電を知るのである。
 3年前に住み始めた頃は、ほぼ毎日のように“煙突のパカッ”を見て、「おお、発電機がまた律儀に働いてくれていることよ!」と半ば呆れ、半ば感心していたが、このところ、とんとそれに気づかなくなった。
 気づかないだけでなく、おそらく、その回数が激減しているのだろう。先日も外交団仲間とのお喋りの中で、それが話題になった。何人かが、「この1年くらいですごく良くなったわ」と言っている。

2年前のイリュミネーション

2年前の年末年始、東京から“はるばる”娘が休暇でセネガルまでやって来たので、私も観光客よろしくダカールの街を眺めてみたのだが、停電がしばしばある割には、派手なイリュミネーションがプラトー地区――ダカールの“旧市街”とも言える、実際には半島の先の端にある中心地――を飾っていて、少し違和感を覚えたのだった。
 雨季になれば“洪水”でバスは走れないし、しょっちゅう停電のある、つまり基本的インフラが整っていない国だというのに、何故…
 その頃、外国人たちは、「プラトーの大統領府周辺は、他の地域と違ってほとんど停電しないらしいわよ」と噂してもいた。
 でも、一方で、イスラム教徒95%の国にもかかわらず、派手にクリスマスを祝っていることに“心地よい違和感”も持った。
 ロンドンのように「大きなプレゼントを車にいっぱい詰め込んで」という光景こそないけれど、イエス・キリストの誕生日は国の祝日の一つで人々にとっては西欧諸国と同じように“家族の日”だ。
 公邸メイドのキャロリーヌさんは、「クリスマスは大変ですよ。親戚中が集まるから私はたくさんお料理をこしらえるんです」と言っていた。
 「イスラムの人たちにもふるまうんですよ。タバスキの時にはご馳走してもらっているし」とも。

タバスキ直前のマルシェ。羊羊羊!

 もともとセネガルの人々はテランガ(おもてなし)精神にあふれているから、特別なことがなくても気軽に食事をふるまうけれど、やはりタバスキは特別だ。そのお返しでもあるクリスマスも、とても意味のあることなのだと思う。

今までパリやロンドンで知った「ユダヤ人と結婚したいと言ったために勘当されたフランスの女の子」とか「インドネシア人を愛してしまったためにイスラムに改宗した若者」とか……。宗教の“簡単”ではないところを、いっぱい見て来た。
 だからセネガルに住んで、社会の寛容さを目の当たりにして、私はまたもや“目から鱗”だった。本当にいい国。

定年で退職したキャロリーヌさんの後任として4か月前から、若いけれど2人の子供のお母さんであるエリザベートさんが公邸スタッフに加わった。
 彼女もまたカトリック教徒だけれど、聞けばイスラム教徒と結婚しているという。
 「それじゃ、豚肉 は食べないの?」と尋ねたら、
 「ええ、一応、夫が一緒の時には。でも、母たちとは食べてます。」とにっこり笑いながら、私たちが食べきれなかった豚肉入り料理の残り物を持って帰ってくれた。
 私がたまに行くフランス系大型スーパーマーケットで、豚肉が売られているのは、その客層からしても当然のことかもしれないが、地場のマルシェにしっかり入り込んだ津久井シェフが、「豚の卸問屋」も見つけて買い出しに行くようになった時にはちょっと驚いた。ダカールでも養豚をし、豚肉を流通させているということである。

ある日シェフは豚の頭を買って来て、“丸ごと”使って《パセリ入りハム:Jambon persillé;フランスのおかず屋さんの定番。夫の大好物》を作った。

Jambon persillé

その日の感動と言ったら!!! ここは本当にセネガルなのだろうか!?

12月の半ばころ、プラトーにある某大使公邸での“クリスマスディナー”にお呼ばれしたので、その前に暗くなった街をひと回りしてみた。
 目的は、今年のイリュミネーションをカメラに収めることだったのだが…
 海岸通りがプラトーに近づいても、特別な光は見えないし、独立広場に来ても、メインストリートを走っても、いつもとほとんど変わりない。レストランとかパティスリーとか、いくつかの“フランス的”な、そして“集客を狙う”所は少しきれいな飾りつけをしているけれど。 あれれどうしたのかしら??
 地味で真面目な大統領――彼は理科系、しかも地球物理学の研究者だったらしい――の、最近の“政策”かもしれません。

ショッピングセンターのクリスマスツリー。これは年々派手になる。

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