コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
字数にしばりのある翻訳(18/05/17)
絵本の翻訳が終わって、校正も終わって、あとは印刷されるのを待つばかりとなりました。今回の絵本は、コープロ、coproductionで印刷されます。コープロについては下のサイトにわかりやすく説明されていますので、参考にしてください。
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翻訳者は原文のとおりに訳すのが基本です。一般的に、日本語に訳すと原文の長さの1.5倍くらいになる、と言われますが、原文から逸脱していなければ、長くなっても問題はありません(一度、本筋に影響を与えない段落をごっそり削除されたことがありました。製本とデザインの都合でした)。

ところがコープロの場合、絵や写真のスペースが決まっていて、文章のスペースも決まっているので、字数に制限が生じます。これは漫画の翻訳や字幕翻訳でも同じですね。ある漫画のセリフを訳した時の作業を再現してみます(ある勉強会の宿題でした)。

原文は、宅配のおじさんのセリフ:
C.O.D. Package for Mrs. Bumstead… $2.20
すなおに訳すと:
ミセス・バムステッド宛の代引きのお荷物です。2ドル20セントです。

原文はセリフの吹き出しの中におさまっているので、訳文も同じかそれ以下の長さにしなければなりません。そこでまず、漫画の流れでわかると判断して、Mrs.Bumsteadを「奥さん」ですませてみました:

C.O.D. Package for Mrs. Bumstead… $2.20
奥さん宛の代引きのお荷物です。2ドル20セントです

まだ長い。漫画全体を読むと、大事なのは、C.O.D.と$2.20の部分だと判断できました。したがってこの二つは削れない。となると削れるのは、絵から判断できる「荷物」。さらにうちに来る宅配便のおにいさんの言葉を思い出して:

C.O.D. Package for Mrs. Bumstead… $2.20
奥さん宛の代引き、2ドル20セントです

これで原文と同じスペースにおさまりました。実際には、字数だけでなく字の大きさも関係するので、もう少し短くする必要があるかもしれません。残るは「です」かな。でもぶっきらぼうになってしまいますね……。

上の例は漫画なので、「荷物」のように絵でわかる言葉を省略することが可能です。絵本や図鑑のような物語や説明文の場合は、他に使える表現はないか、と言葉探しに奔走。国語辞典、類語辞典、英和辞典など、あるだけ開いて、どんな訳語が載っているか、どんな言い換えが可能かを探ります。なかなかみつからなくて、あきらめて散歩や買い物に出たら、途中でふと思いついた、ということもありました。普段から、本や映像、人の会話などに目をこらし耳をそばだてて、言葉のストックを増やして充実させておきたいものです。

長年、感謝する側にいるので、感謝される側に回ると嬉しいものです。ありがとう。

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