ひとり演習
ジェーン・エア 演習12(18/10/18)
 “Good-morrow, Mrs. Poole!” said Mr. Rochester. “How are you? and how is your charge to-day?”
 “We’re tolerable, sir, I thank you,” replied Grace, lifting the boiling mess carefully on to the hob: “rather snappish, but not ‘rageous.”
 A fierce cry seemed to give the lie to her favourable report: the clothed hyena rose up, and stood tall on its hind-feet.
 “Ah! sir, she sees you!” exclaimed Grace: “you’d better not stay.”
 “Only a few moments, Grace: you must allow me a few moments.”
 “Take care then, sir!—for God’s sake, take care!”
 The maniac bellowed: she parted her shaggy locks from her visage, and gazed wildly at her visitors. I recognised well that purple face,—those bloated features. Mrs. Poole advanced.
 “Keep out of the way,” said Mr. Rochester, thrusting her aside: “she has no knife now, I suppose, and I’m on my guard.”
 “One never knows what she has, sir: she is so cunning: it is not in mortal discretion to fathom her craft.”
 “We had better leave her,” whispered Mason.
 “Go to the devil!” was his brother-in-law’s recommendation.
 “‘Ware!” cried Grace. The three gentlemen retreated simultaneously. Mr. Rochester flung me behind him: the lunatic sprang and grappled his throat viciously, and laid her teeth to his cheek: they struggled. She was a big woman, in stature almost equalling her husband, and corpulent besides: she showed virile force in the contest—more than once she almost throttled him, athletic as he was. He could have settled her with a well-planted blow; but he would not strike: he would only wrestle. At last he mastered her arms; Grace Poole gave him a cord, and he pinioned them behind her: with more rope, which was at hand, he bound her to a chair. The operation was performed amidst the fiercest yells and the most convulsive plunges. Mr. Rochester then turned to the spectators: he looked at them with a smile both acrid and desolate.

「おはよう、プールさん」ロチェスター氏が言った。「調子はどうかな? それからきょうの患者のご機嫌は?」
「わたしもこの人も、まあまあですよ」グレースが答えて、何かのごった煮を慎重に台にのせた。「けっこう文句が多いけど、怒っているというほどではないかと」
 すさまじいわめき声がして、控えめな報告を台無しにした。服を着たハイエナが立ち上がって、仁王立ちしている。
「旦那さま! 見てますよ!」グレースが大声を出した。「こちらにはいらっしゃらない方が」
「ほんの数分だよ、グレース。数分だけ時間をくれ」
「ではお気をつけて。お願いですから、気をつけて!」
 精神を病んだ女が吠えた。顔にかかった髪を左右に分け、野獣のような目で訪問者を見つめる。その紫色の顔に見覚えがあった。鼻も口も膨らんだように大きい、あのときの顔だ。ミセス・プールが一歩前に出た。
「来るな」ロチェスター氏はそう言うと、ミセス・プールを押しのけた。「今はナイフを持ってないだろう? わたしだって用心はしている」
「何を持っているか、わかったもんじゃありません。とてもずる賢いんですから。普通の考えじゃ、この人の悪知恵は見抜けませんよ」
「離れた方がいいんじゃないか」メイソンが小さな声で言った。
「うるさい、黙ってろ!」義理の弟が返した。
「あぶない!」グレースが叫んだ。3人の男たちはいっせいに後ずさりした。ロチェスター氏はわたしを後ろにかばった。と、病んだ女が跳びかかってきて、ロチェスター氏の喉を締めつけ、歯をロチェスター氏の頬にあてた。取っ組み合いがはじまった。女は大きく、夫と同じくらいの背丈で、おまけに太っていた。組み合いながら男のような力を出している。相手が筋骨たくましいのにもかかわらず、一度ならず絞め殺しそうになったほどだ。ロチェスター氏は女を殴って押さえつけることもできたかもしれない。しかし殴ろうとはせず、ただ格闘するばかりだった。そうしてようやくのこと、腕を押さえた。グレース・プールがひもを差し出したので、女の腕を後ろで縛り、手に持っているロープで椅子に縛り付けた。その間ずっと、女はこの世のものとも思えないすさまじい叫び声をあげ続け、激しくつかみかかろうとし続けていた。やがてロチェスター氏が見物人の方をふりむいた。冷酷な笑みを浮かべているが、それは物悲しそうでもあった。

*Good-morrowはGood morningの古い言い方。とはいえ、「おはよう」でいいかと。
*chargeの訳語に「託された人《託児所の子供、病院の患者など》」(リーダーズ)とあります。
*give the lie to her favourable report 患者の様子を優しい言い方で控えめに好意的に表現したのに、キーッだのギャーだのとわめくものだから、生易しい状況ではないことがわかった、の意。
*recognise 見て、ああ、あのときの、とわかった、の意。結婚式を挙げる前に、ジェーンが寝ているときに部屋へ侵入してきて、ジェーンの顔を悪意ある目でじっと見つめた人物がいました。それが不気味で、誰だかわからず、ずっとミセス・プールかと思っていたのでした。
*it is not in mortal discretion to fathom her craft 「彼女の悪巧みを見抜くことは、人間の判断力によるものではない」つまり普通に考えていたら、見抜けないよ、の意。
*was his brother-in-law’s recommendation、recommendation「勧告、薦め、提案」、離れた方がいい、と言われて、「お前は地獄へ行け」と返したのですから、皮肉な「提案」です。あえて「返した」とだけにしました。
*cordとrope、リーダーズによると、cordはropeより細いそうです。腕を縛り、その後椅子に縛り付けているので、そういう区別になるのかと。
*he looked at them with a smile both acrid and desolate、acridとdesolateは、真逆の気持ちを表しています。両方の気持ちを同時に持っていますが、ジェーンにはdesolateの方が強く印象に残っているのではないか、と想像します。

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