ひとり演習
ジェーン・エア 演習6(18/06/15)
 Mr. Wood seemed at a loss. “What is the nature of the impediment?” he asked. “Perhaps it may be got over—explained away?”
 “Hardly,” was the answer. “I have called it insuperable, and I speak advisedly.”
 The speaker came forward and leaned on the rails. He continued, uttering each word distinctly, calmly, steadily, but not loudly—
 “It simply consists in the existence of a previous marriage. Mr. Rochester has a wife now living.”
 My nerves vibrated to those low-spoken words as they had never vibrated to thunder—my blood felt their subtle violence as it had never felt frost or fire; but I was collected, and in no danger of swooning. I looked at Mr. Rochester: I made him look at me. His whole face was colourless rock: his eye was both spark and flint. He disavowed nothing: he seemed as if he would defy all things. Without speaking, without smiling, without seeming to recognise in me a human being, he only twined my waist with his arm and riveted me to his side.
 “Who are you?” he asked of the intruder.
 “My name is Briggs, a solicitor of --- Street, London.”
 “And you would thrust on me a wife?”
 “I would remind you of your lady’s existence, sir, which the law recognises, if you do not.”
 “Favour me with an account of her—with her name, her parentage, her place of abode.”


 ウッド牧師は戸惑っているようだった。「妨げとはどういうものですか? 説明すればすむような、なんとか収められるものでしょうか」
「それは無理です」と声がした。「これ以上ない妨げ、と申し上げました。熟考の上での申し立てです」
 声の主が近づいてきて、内陣の手すりに寄りかかった。一語一語はっきりと、感情を抑えて、落ち着いて、声を荒げることなく言葉を続ける。
「以前の婚姻が存在する、というだけのことです。ロチェスター氏には、まだ生きている奥様が、いらっしゃいます」
 雷に動じたこともないのに、抑えた調子の言葉に、不安な気持ちが揺れた。冷気も炎も感じたこともないのに、その言葉の名状しがたい恐ろしさを、体中の血が感じた。しかしわたしは気を取り直した。気が遠くなることはなかった。ロチェスター氏を見つめ、わたしの方に向かせた。彼の顔は色を失った岩のようで、目は鋭く光りながらも無表情だった。否認もしない。すべてを無視するつもりのようだ。何も言わず、笑みも浮かべず、わたしを血の通った人間とは思っていないかのように、ただわたしの腰に腕を回して、自分の身体にぴったり寄せていた。
「お前は誰だ」ロチェスター氏は闖入者に問うた。
「私はブリッグズといいます。ロンドンの○○ストリートの弁護士です」
「それで、私に妻なるものをおしつけようと?」
「奥様がいらっしゃることを思い出していただきたいのです。お認めにならないとしても、法律はそのように認めています」
「それはどういう人物か、説明してほしい。名まえは? 生まれは? どこに住んでいる?」

*the nature、冠詞がつくかつかないかで意味が変わります。「本質、自然、性質」など、訳しにくい単語の筆頭にあげられる。ここは「本質」や「性質」のニュアンスで、事と次第によっては、たいした問題ではないかもしれない(Perhaps it may be got over……)、と続きます。
*Hardlyは、it may hardly be got overの意。
*was the answer、まだ声だけの場面。
*insuperable、演習5のan insuperable impedimentを受けた言葉なので、同じ訳語を使います。
*The speaker came forward直訳すれば、「話し手が前へ進んできた」となりますが、話者であるジェーンが内陣前にいて、教会の後ろからそちらへ進んできたわけなので、ジェーンの視点から言うと、「前へ」というより「近づいて」の方が自然ではないかと考えます。
*uttering each word distinctly, calmly, steadily, but not loudly-- 副詞がカンマを使って並びます。その意味から、続くセリフをそのように切ってみました。
*nervesは迷いました。複数形で「神経異常、臆病、気後れ、緊張」などがあるので、ドキドキすることなんだろうな、と想像。
*as they had never vibrated……とas it had never felt……のas、文法的な説明が難しい。文意は、as以下だったのに、今はこんなにも動揺している、となるのは明白で、asのどの定義にも当てはまりません。強いて言うならば、「譲歩」でしょうか。
*thrust on me a wifeのwifeに不定冠詞のaがついています。妻はいないことになっているので、特定の誰かを指すのではなく、「妻という存在」を表わします。
*with an account of herのherは直前のyour ladyを指します。弁護士の言う「奥様」とは誰のことか、と問うています。しかしロチェスター自身に「奥様」と言わせるのはおかしいし、「妻」では妻がいるのを認めることになるので、ここは「それ」を使いました。

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