コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
「暖かい夏」って…(15/03/31)
桜が咲いて、かなり暖かくなってきました。日向では暑いくらいのときもありますね。

さて、某検定試験の問題を見て、ちょっと疑問に思うことがありました。第一次世界大戦でドイツがベルギーに侵攻したときのお話の冒頭で、気になった原文はIt was a warm summer's day in late August。ここの訳例が「8月も終わりに近い暖かい夏の日」となっていました。う~ん、字面も音も、なんかヘン。

調べると、ベルギーの7月8月の最高気温は約23度、平均気温は約18度で、日本の7月8月とくらべると格段に涼しく、しかも湿度が低く、カラッとしていて過ごしやすいのだそうです。軽井沢みたいな感じでしょうか。

平均気温が18度でカラッとした快適な夏なので、日本人の思う「暑い夏」とは違うのはわかります。でも一般的に、日本人にとって「夏」という言葉には気温が高いイメージがあるので、そういうイメージの言葉に、ゆるゆるとしたイメージの形容詞「暖かい」をつけられるか、疑問です。本来と違う、今年だけの今だけの特別な性質を表す「涼しい夏」や「暖かい冬」は、よく聞きますね。

ちなみに、ジーニアス英和辞典には、warmの形容詞の1番に、「暖かい、温暖な; (やや)暑い」とあって、「日本語の『暑い』はwarmで表せる場合もある」と書いてありました。リーダーズにも訳語の中に「暑い(hot)」がありました。また小学館ランダムハウスには、a warm summer「かなり暑い夏」という、ぐっと踏み込んだ表現が載っています。わたしの記憶のずっと奥の方にも、It’s warm today.と言いながら、手のひらをうちわのようにして顔をあおぐ女性の姿が残っています。たぶん映画だと思います。提示できるような証拠はありませんけど。

warmとかhotとか、気温に関する表現はそこにいる人の感覚なので、この場合はベルギーのその場にいる人が「暖かい」と感じたからwarmが使われたのでしょう。それを日本人に読ませる訳者は、どう処理すればいいのか、難しいです。「それほど暑くない8月も末のある日」とか? なんかまどろっこしいですねえ…。

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