コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
新訳に挑戦 その3(15/10/02)
7月半ばに頂戴した神話に関する本の翻訳、予定通り、2か月で担当部分は一通り訳し終えました。今は読み直しと訳し直しの作業をしています。最終的に提出するのは10月半ば。

2か月も前に書いた訳文だと、すっかり他人の訳になっていて、どうしてこういう訳になるの?とか、意味がわかんないんですけど…とか、そういう箇所がけっこう出てきました。意味がわからないと感じたところは、誤訳していることが多い、というのはよく言いますが、本当にそう。基本的な構文なのに、なんで間違えるかなあ、などとひとりでツッコんでいます。他にも思い込みで訳していたり、かっこつけて訳したせいで、原文の意図とずれてしまったり、そんな恐ろしい「誤訳」が見つかって、冷や汗をかいています。落ち込みます。でも、編集者に提出する前に気づいてよかった。こういうミスが見つかると、他がどんなにうまく訳せてもダメな翻訳者と言われるでしょうから、それも怖いと思いました。

さて、どんな翻訳でも、調べものは必要なのですが、今回の神話物は特に調べものに時間がかかりました。なぜなら、単なる読み物ではなくて、啓蒙書、研究書の類だから。広範な知識を元に書かれている本だから。そして自分が苦手とする分野の知識も必要だったから。ユングやフロイトの理論、トルストイの『アンナ・カレーニナ』、ダンテの『神曲』、聖書、仏教の基礎、その他もろもろの確認がどうしても必要でした。その道の専門家が訳した既訳本があるので、それを参考にすればいい、とも思いましたが、やっぱりわたし自身が理解して納得しなければ、訳せない。ある意味、たいへん貴重な勉強をさせてもらった、と言えます。ノンフィクションの翻訳ではよくあることですが、一冊の本から知識の世界が広がるんです。一通りの作業が終わると、なんだか賢くなったような気さえします。

今回面白かったのは、わたしが趣味でそろえている漫画本が役に立ったこと。それは講談社が出しているギャグ漫画で、イエス・キリストと仏陀が下界、しかも東京の立川で暮らす話なのですが、神話の登場人物やダンテ、仏陀の修行時代の逸話などが、面白おかしく、けれど理解しやすい形で紹介されています。おかげでイメージが湧いて、助かりました。文芸翻訳は、何が出てくるかわからない。だから普段からいろいろな分野のいろいろな情報を集めるようにするといいですね。くだらない、と思うような本が、意外な助っ人になることもあるようです。

参考にした神話と聖書

まさか漫画が役に立とうとは…

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