コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
新訳に挑戦 その4(終)(15/12/27)
ずっと本のタイトルを言わないまま新訳の話を続けてきましたが、12月18日に刊行されましたので、報告します。

『千の顔をもつ英雄』上・下 ジョーゼフ・キャンベル著
倉田真木・斎藤静代・関根光宏訳
早川書房
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原書はThe Hero with a Thousand Faces で1949年の刊行、1984年に初めて邦訳がでました。神話学や哲学などの専門家が訳しているので、少々読みにくい言い回しが目立ちますが、さすが専門家だけあって、細かいところまでよく調べた訳だと編集者は言っていました。原著は神話学の名著と呼ばれています。

新訳を出す理由は、訳がよくないから、とか、表現が古すぎるから、とか、いろいろあるようです。この本の場合、ジョージ・ルーカスがこの本からインスピレーションを得て『スター・ウォーズ』シリーズを制作した、と言われているので、つい先日公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に合わせて、新しい読者を獲得するため、かもしれません。それはともかく、名著と呼ばれる作品の新訳は気を遣います。既訳にも敬意を払い、原著と並べて、内容を確認しながら訳していかなければならないからです。既訳の誤訳や訳脱を見つけることもありましたが、逆に、既訳に助けられて内容を理解したこともありました。

翻訳するにあたって編集者から注意されたことがありました。それは、学術書なので、読みやすい表現の中にあっても威厳を失わないように、ということ。原文がコチコチの硬い文だったら、それを生かして原文通りの硬い訳でよい、とも言われました。必ずしも「読みやすい表現」イコール「砕く」ではないことを、この数か月で学びました。下巻の前半を担当した倉田真木さんは、一緒に洋書の森の活動をしているベテランの翻訳者ですが、彼女の訳はこの難しい問題を軽々とクリアしています。読んでみてください。

今年もあと少しで終わり。クリスマス前に依頼された児童書のリーディングも無事納品し、穏やかに新しい年を迎えられそうです。来年も、良い本との出会いがあるといいなあ。

みなさま、この一年、ブログを読んでくださって、ありがとうございました。
良いお年を!

神楽坂の椿屋で見つけたおサルさんの人形。かわいいでしょ?

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