コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
河野勉強会 その2(16/05/22)
5月7日に始まった河野一郎先生の勉強会、今日までに3回課題の訳文を提出しました。まあまあの評価はいただけましたが、表現の仕方でチェックを入れられた箇所があって、考えさせられました。

たとえば、次の二つの文。これは第1回の課題だったRobin Allanの童話、“Come into my Castle”の冒頭部分、作品の書き出しです。

John was walking along a road.
He was on holiday in the mountains.

わたしの訳(A)は:
ジョンが山道を歩いています。
休みの日に山に来ていました。

先生の訳(B)は:
  ジョンは山道を歩いていました。
  休暇で山歩きをしていたのです。

原文は過去進行形ですが、(A)では現在進行形で訳し、(B)ではそのまま過去進行形で訳しています。また(A)では「が」、(B)では「は」というように、主格を表す助詞も違います。比べると、(B)の方が素直な出だし、という印象を持つでしょう。

わたしは、主人公がジョンであることを強調して「が」を用い、歩いている様子を実況中継して、読者の意識がジョンと一緒に進むことを目指しました。この先も、ジョンと同じ目線になるように訳文を作っています。また、「~していたのです」の「のです」があまり好きではない、ということもあって、できれば使わない方法をと考えて、このような訳文になりました。考えすぎ、作りすぎ、でしょうか。

たった2行なのに、簡単な英語なのに、訳者の読み方や考え方で違ってくるものですね。

それからこの童話には、お城に住むMrs. Spiderが登場します。じつはジョンを食べようとするクモの魔物。この魔物の自己紹介、「わたしの名前はMrs. Spider」をどう訳すかも試されました。そのまま「スパイダー夫人」では子どもにとって伏線にならないため、ダジャレでもなんでも、工夫が必要でした。これ、苦手です。スパイダーマンを思い出して、「ミセス・スパイダ」で済ませてしまって減点。これだとあとで展開するのが難しいのでは、というコメント付きです。……今、思いついた! 「クモーマ」とか「クモーノス」なんて、どうでしょう?

知り合いの翻訳者に、言葉遊びが好きで何かとダジャレをとばす人がいます。翻訳で、英語のユーモアをユーモアとして日本人読者に伝えなければならないときや、英語のリズムや韻を伝えたいときがありますが、この翻訳者だったら、そういうときにスッとアイディアが浮かぶのではないでしょうか。周囲の困惑など気にしないで、ダジャレで鍛えるといいかもしれません。

ところで、添削を受けたり評点をつけられたりするのは、久しぶりです。これまで道場や講座で「する側」にいましたが、改めて「される側」の気持ちを感じています。この点も、今後の参考にしたいと思います。

(参考)
友人の翻訳者、原田勝さんのブログに、スティーブンソンの『宝島』の数々の訳を比較した記事が載っています。訳者によって、時代によって、訳文が異なることを、具体例をあげて語っています。参考にしてください。
こちらをクリック!

翻訳家のエッセーは、面白さの中に翻訳のヒントが隠れています。次はこれを読みます。


このサイトは翻訳学校サン・フレア アカデミーの運営です。

PAGETOP