コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
河野勉強会 その5(16/07/09)
5月から始まった河野一郎先生の勉強会――正確には、「神奈川大学生涯学習エクステンション講座: 翻訳家をめざす講座」と言います――は、7月9日に最終日を迎えることとなりました(このブログが更新されるときには最後の授業を受けているでしょう)。古くは大学時代の授業、その後個人的な交流からサン・フレアアカデミーでの講座、そして今回の講座と、本当に長くご指導いただきました。

河野勉強会は、日本語を考えることと添削による実技指導が二本柱です。特に後者の実技指導は、久しぶりの体験でした。原文を一読して全体の流れとイメージをつかみ、丁寧に辞書を引いて訳し、読み直して不自然な表現を直す。そうして1日放置して、頭を冷やしたところでもう一度原文と訳文を読み直して、確認して、そうして提出。翻訳らしい翻訳に仕上げたいと思って、すごく緊張しました。結果は、まあまあ、ということで。

この勉強会で再認識したことを3つ挙げます。

①知っている単語・表現、簡単な単語をバカにしない:
パソコンにインストールした辞書(串刺し検索ができるようにプログラムを構築してあれば、なお可)でも紙の辞書でも、とにかく辞書での確認を怠らない。たとえば、The politician is quite ancient; he is a year or so shy of eighty.では、ancientとshyがチェックすべき単語です。ancientは「老齢の」、shyは「足りない、達しない」の意。「古代人」「恥ずかしがる」では、意味不明になるはず。どうもおかしい、と感じた時点で辞書を開いていなければなりません。

②会話文は意外に難しい:
そういう場面になじみがあったり、登場人物にsympathyを感じたり、登場人物が属する環境が自分のと似ていたりするときには、あまり苦労しないで訳せるでしょう。けれど性別が違ったり、世代が違ったり、身分が違ったり(たとえば王室物)したら、そういう言葉づかいで訳せますか? 乱暴な言葉や汚い言葉は使えますか? 上流階級の奥様やお嬢様の言葉はどうでしょう? 尊敬語や謙譲語を場面に合わせて使い分けられますか? セリフがたくさん出てくる小説は訳すのが楽だ、なんて勘違いしないでください。実はけっこう難しいのです。登場人物の人物描写に大きく関わってきますから。

③異なる言語を置き換えるだけが翻訳ではない。文化を伝えるのも翻訳の仕事:
翻訳は、異なる文化間で情報をやりとりするための手段です。単に異なる言語を置き換えるのではなく、その裏にある文化やモノの考え方も伝えられるようにしなければなりません。「顎(あご)」の話が印象的でした。日本語で「あごを出す」と言うと、「疲れ切って、へたばって」のニュアンスになりますが、英語のthrow one’s chin outは、反抗心を表します。ですからthrow…は「あごを出す」と訳してはいけない。それから、これは勉強会以外の場所で、遅まきながら最近確認した話ですが、corn=「トウモロコシ」ではない。アメリカでは「トウモロコシ」ですが、イギリスでは「麦」の総称なんです。辞書に出ています。確かに、トウモロコシ畑と言ったら、アメリカの広大な大地に果てるともなく続く、あのトウモロコシ畑を思い浮かべます。イギリスでは見ませんものね…。風土、文化によって、その単語がイメージするものが違ってくる可能性があるということを、常に頭に置いておかなければ、と改めて思いました。

期間中毎週土曜日、掃除も洗濯もせず、新聞をじっくり読む時間もなく、朝8時25分に家を出て、地下鉄に乗って横浜の桜木町へ。教室があるのはクイーンズタワーというおしゃれなビルの14階で、ラウンジの窓から見える景色は、絵ハガキか映画のワンシーンかと思うほどの絶景。初日は息をのみました。毎回配布される資料は10数枚。それをすべてファイルして、いつ前回、前々回の話題に戻るかわからないので、毎度持参。さらに中型辞書(リーダーズ)も必ずカバンに入れて、熱中症予防のために飲み物も入れて…。だから荷物の重いこと重いこと。そして帰ってくれば、次の課題提出まで気が抜けない。でも次の授業を待ち望む自分も確かにいました。ほんとうに濃い2か月半でした。

9月にサン・フレアアカデミーのオープンスクールで一コマ授業を担当します。今回の勉強会で学んだこと感じたことを生かした授業にできるよう、今から準備です!

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