コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
訳語を決めるには(16/09/10)
9月にはいって最初の土曜日、サン・フレアアカデミーのオープンスクールで一コマ担当しました。実務翻訳を専門とするサン・フレアアカデミーですが、意外にも文芸の講座に興味を持つ受講生がいて、とてもありがたく思っています。普段は通信講座を担当するため、年に2回の受講生を前にしゃべる講座開講には、緊張しつつも高揚するものがあります。(久しぶりに会った知り合いの講師に、まるで七夕だね、と言われました。ロマンチックな表現に、嬉しくなってニッコリ!)

今回は、オープンスクール全体のテーマが「TQE対策」だったので、TQE文芸部門の過去問から間違えやすい表現をピックアップして解説しました。たとえば:

After a while she gave me glimpses of herself, sweet and womanly

She was excited at the thought of meeting this traditional, this almost mythical aunt whom she had so often heard about.

It was a warm summer’s day in late August.

A girl looked at him smilingly, frankly in the face without a quiver of repulsion…

赤字の単語は、よく使われる訳語では不自然だったり、文意に合わなかったりします。文脈に合う訳語は何か、辞書を徹底的に読んで訳語を決めなければなりません。ただ訳せばいいのではない、文脈を考えてください、ということをお話しました。

講座では、事前課題としてあるノンフィクション作品の中に出てきた新聞記事を出題していました。この中にも悩む単語がありました:

…when he was struck from behind by a car and carried some twenty metres along the road…

carriedはどのように訳しましょうか。よく言われる「ひきずられた」なのか「(車のボンネットに乗った状態で)運ばれた」なのか。実際どんな事故だったのか、わかれば訳語が決まります。このケース、残念ながら調べがついていません(ボンネットかなあ、という気も)。

これに先立つ8月20日、日本出版クラブの洋書の森で宮脇孝雄先生のセミナーが開催されました。テーマは「基本にかえれ」単語編。イギリスでのcornとアメリカでのcornは違うので、辞書をちゃんと調べましょう、というお話かと思いきや、講義の内容はもっとずっと専門的で学問的でした。時代背景や原作者の生い立ち・思想をもとに訳語を考えるという高度な翻訳。

宮脇先生の講義は専門的で学問的なお話でしたが、冷静に考えると、「文脈に合う訳語を選ぶ」ことに変わりはありません。つまり、あらゆる角度から単語および原文を検討して、最適な訳語を選択しましょう、となります。先ほど例に挙げたcarriedのように、調べがつかないまま訳すことがあるかもしれませんが、それでも考えることを疎かにしないようにしたいものです。

脳死状態に陥った弟をめぐる愛と葛藤の記録。この中の新聞記事を課題にしました。

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