コーヒーブレイクde翻訳
出版翻訳や、翻訳道場を始めとする翻訳指導など、日々の業務で感じたことをつづっています。
読書する人しない人(17/05/24)
2011年と2012年に通学の文芸翻訳講座を開いたことがありました。延べ15人の受講生と直接顔を合わせて、まだ著作権が有効で翻訳されていない原書を読みました。直接教室で顔を合わせる授業では、一人ひとりに現物の原書を渡して読むことができるので、どんな新しい作品もOKです。WEB上の講座では著作権の切れた作品しか扱えないので、通学の講座ではとても自由で新鮮な気持ちになれました。

講座では翻訳そのものの勉強以外に、今読んでいる本やおススメの本の紹介タイムを設けました。たとえばロシア語に堪能なAさんは当時ロシアで評判になっていた本を、(記憶が間違ってなければ)学生時代に日本文学を専攻していたBさんは蜂飼耳さんの作品を紹介する、という具合に。本を紹介する人には、内容を咀嚼して客観的にまとめ、薦める理由も伝える能力(レジメにも通じる?)が要求され、紹介される側には、自分では選ばない本を知るという機会になりました。本の紹介は、プレゼン力を鍛え視界を広げるという意味で、有意義な試みだったと思います。

翻訳者同士で話をしていても、今こんな本が面白いよ、と和書洋書問わず、本の紹介は日常茶飯事。翻訳者は事実、本を読んでいます。純粋に読書を楽しむ人が主流ですが、日本語の鍛錬、英語の勉強、翻訳の仕事のために読む人もいれば、仕事に役立つ知識のために読む人もいます。

ところがあるとき、「本は読まない」と言う人に会いました。驚きました。文芸翻訳のための講座での発言でしたから。いや、本は読んでくださいな、翻訳を仕事にしたいなら、外国語に通じるためにも、日本語の使い方やリズムなどを学ぶためにも、と諭したかどうか忘れました、あまりにショックだったので。翻訳という作業が好きなだけであって、本には興味がない? 

ずっと昔、まだ修業時代に恩師が嘆いていました。主宰する文芸翻訳の教室にやってきた才媛(というから女性です)が、わたしは本を読みませんが、英語はできます、と言ったとか。その後彼女が翻訳家としてデビューしたかどうか知りませんが、翻訳の教室でそう言い放つ度胸には驚きました。

本を読まないなんて、周囲の翻訳者の間では考えられない話です。つい最近、朝日新聞の「声」欄に、どうして読書をしなければならないのか、という意見が載り、それについて賛否両論、しばらく盛り上がりました。読書も好みですから、強制されて苦しく思う人もいるのでしょう。でも、出版に関わるなら、読書が嫌いでは仕事になりません。翻訳を仕事にしたいと思うなら、どうか読書を好きになって、言葉の感性を磨いて下さいね。

珍しく興味をそそられた教養書。小説のように一気には読めないのですが、少しずつ読み進めています。

このサイトは翻訳学校サン・フレア アカデミーの運営です。

PAGETOP